専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生(山階鳥類研究所)から回答がありましたので掲載します(事務局)
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お示しの鳥はマガンでよろしいと思います。
おっしゃるとおり、体がカモ類のようなカラフルな羽色でなく暗褐色で、カモ類より体が大きく、首が長く、頭が相対的に小さく見えることからガン類であることがわかります。
東北地方で観察されるガン類の中に、写真のように全身が暗褐色な種は何があるか、図鑑をご覧になっていただくと、マガン、ヒシクイ、カリガネの3種であることがおわかりと思います。お示しの写真は細かい特徴がわかりづらく、この3種のどれかを検討するのが少し難しいですが、失礼して、お示しの写真を切り出して無理矢理に拡大してみました。
この3種のうち、ヒシクイは嘴が黒く、先端近くに橙色の斑があります。写真の鳥の嘴は全体に淡色でピンクまたは橙色の系統に見えるので、ヒシクイは除外できるでしょう。
残る候補のマガンあるいはカリガネにあうかですが、図鑑をご覧になるとおわかりのようにマガンとカリガネはそっくりです。両種とも嘴はピンクまたは橙色系統で、成鳥では額が白く、幼鳥の額は白くありません。拡大した画像をご覧いただくと、嘴が淡く、額が白い個体と白くない個体がまざっていることがわかり、この2種とあうことがおわかりと思います。さらに画像の右半分で翼を広げた個体を見ると、広げた翼のパターンや、尾の先端から腰に向かって白→黒→白→黒というパターンなのもこの2種の特徴と矛盾しません。
ではマガンとカリガネをどうやって見分けるかですが、ひとつには宮城県ではマガンは非常な多数が越冬し、カリガネはごくごく少ないという点を考慮する必要があります。環境省が毎年冬に全国で実施しているガンカモ類の生息調査結果がインターネットで見られます(下記リンク)が、2017年1月の調査では、宮城県全体でマガン約16万5千羽、ヒシクイ約3400羽が記録されましたが、カリガネは記録されていません。 写真を撮影された宮城県美里町でカリガネが見られる可能性がないということはないと思いますが、偶然出会える確率はそんなに高くないと思います。
ガンカモ類の生息調査(環境省生物多様性センター)
http://www.biodic.go.jp/gankamo/gankamo_top.html
さらに、カリガネの識別点としてマガンより体が少し小さい、近距離の観察では眼瞼が黄色い(目の回りに黄色い縁取りが見える)、成鳥の額の白がマガンより広くて頭頂部まで及んでいる、という点があります。遠いので目の回りのことは不明ですし、体の大小も判断がつきませんが、拡大した写真で見た成鳥の額の白は頭頂部までは及んでおらず、これはこの鳥がマガンであることを示しています。下記の「新版 日本の野鳥」にマガンとカリガネの成鳥の頭部の比較の写真がありますので見てみてください。
カリガネ(新版 日本の野鳥 / 山と溪谷社、 p. 32)
https://i-zukan.jp/contents/20/viewer?genre=1&page=33
というわけで、本当はもっと近くから撮影された細部のよくわかる写真があるほうがよいのですが、上記のような検討から、お示しの画像の鳥はマガンと言ってよろしいと思います。次回はぜひ、事前に上記の点や、図鑑の記述を検討されて、着眼点を気にしながら観察撮影をしてみてください。
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お示しの鳥はマガンでよろしいと思います。
おっしゃるとおり、体がカモ類のようなカラフルな羽色でなく暗褐色で、カモ類より体が大きく、首が長く、頭が相対的に小さく見えることからガン類であることがわかります。
東北地方で観察されるガン類の中に、写真のように全身が暗褐色な種は何があるか、図鑑をご覧になっていただくと、マガン、ヒシクイ、カリガネの3種であることがおわかりと思います。お示しの写真は細かい特徴がわかりづらく、この3種のどれかを検討するのが少し難しいですが、失礼して、お示しの写真を切り出して無理矢理に拡大してみました。
この3種のうち、ヒシクイは嘴が黒く、先端近くに橙色の斑があります。写真の鳥の嘴は全体に淡色でピンクまたは橙色の系統に見えるので、ヒシクイは除外できるでしょう。
残る候補のマガンあるいはカリガネにあうかですが、図鑑をご覧になるとおわかりのようにマガンとカリガネはそっくりです。両種とも嘴はピンクまたは橙色系統で、成鳥では額が白く、幼鳥の額は白くありません。拡大した画像をご覧いただくと、嘴が淡く、額が白い個体と白くない個体がまざっていることがわかり、この2種とあうことがおわかりと思います。さらに画像の右半分で翼を広げた個体を見ると、広げた翼のパターンや、尾の先端から腰に向かって白→黒→白→黒というパターンなのもこの2種の特徴と矛盾しません。
ではマガンとカリガネをどうやって見分けるかですが、ひとつには宮城県ではマガンは非常な多数が越冬し、カリガネはごくごく少ないという点を考慮する必要があります。環境省が毎年冬に全国で実施しているガンカモ類の生息調査結果がインターネットで見られます(下記リンク)が、2017年1月の調査では、宮城県全体でマガン約16万5千羽、ヒシクイ約3400羽が記録されましたが、カリガネは記録されていません。 写真を撮影された宮城県美里町でカリガネが見られる可能性がないということはないと思いますが、偶然出会える確率はそんなに高くないと思います。
ガンカモ類の生息調査(環境省生物多様性センター)
http://www.biodic.go.jp/gankamo/gankamo_top.html
さらに、カリガネの識別点としてマガンより体が少し小さい、近距離の観察では眼瞼が黄色い(目の回りに黄色い縁取りが見える)、成鳥の額の白がマガンより広くて頭頂部まで及んでいる、という点があります。遠いので目の回りのことは不明ですし、体の大小も判断がつきませんが、拡大した写真で見た成鳥の額の白は頭頂部までは及んでおらず、これはこの鳥がマガンであることを示しています。下記の「新版 日本の野鳥」にマガンとカリガネの成鳥の頭部の比較の写真がありますので見てみてください。
カリガネ(新版 日本の野鳥 / 山と溪谷社、 p. 32)
https://i-zukan.jp/contents/20/viewer?genre=1&page=33
というわけで、本当はもっと近くから撮影された細部のよくわかる写真があるほうがよいのですが、上記のような検討から、お示しの画像の鳥はマガンと言ってよろしいと思います。次回はぜひ、事前に上記の点や、図鑑の記述を検討されて、着眼点を気にしながら観察撮影をしてみてください。
回答日2018年12月14日
まるちゃん
ご丁寧な返信
有難う御座います
有難う御座います
回答日2018年12月16日
回答