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いがりまさし 日本のスミレ再考

第1回 タチツボスミレの来た道 

2018-02-09

『山溪ハンディ図鑑 日本のスミレ』(山と溪谷社)の著者であるいがりまさしさんの短期連載です。日本に分布するスミレの、海外での分布や形態について、研究者などと同行しながらご自身の目で見て、日本のスミレを再考します。

 

 

日本列島でもっとも普通のスミレ

タチツボスミレ Viola grypoceras var. grypoceras は日本列島でもっとも普通に見られるスミレといっていいだろう。北海道から沖縄まで分布する唯一のスミレともいえる。自生環境もすこぶる日本的で、田の畦など日向にもあるが、杉林の周辺など日陰にもしぶとく咲いている。

中国や朝鮮半島にも、少しはあると聞いてはいたが、それまで歩いた、四川省、雲南省、韓国北部、そしてロシア沿海地方では一度も見たことはない。そして、ネットにも海外のタチツボスミレの具体的な情報はほとんどなかったのである。

 

重慶の里山

SNS時代になって、中国は重慶のスミラー(スミレマニア)、Yang Yang(楊洋)が、金佛山のスミレの写真を送ってくれるようになった。まずは、スミレの種類が多いのに驚いた。そして、そのなかにタチツボスミレがあるのが目についた。

すぐに、「翌年のこの時期、重慶に行きたい」とYangにメッセージを送って、カレンダーに書きこんだ。

翌2017年の4月、訪ねてみた金佛山は、それまで抱いていた大陸のイメージとかけ離れていた。北緯29度、標高1000~2000mという、日本にはない環境だが、空気の湿り具合といい植生の密度といい、ちょうど四国か九州の低山帯を歩いているような感覚だ。

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