専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生(山階鳥類研究所)からコメントがありましたので掲載します(事務局)
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公園で猛禽が鳥を捕食している場面に遭遇されたのですね。さぞかし興奮なさったことと思います。
さてこの鳥ですが、すでに名前が出ているオオタカの今年生まれの幼鳥でよろしいと思います。
大まかな絞り込みとして、ハト(餌となっているのはご指摘のようにドバトだと思います)よりかなり大きく、全体に褐色で体下面は淡く、体下面に縦斑があり、また淡色の眉斑がある、観察地が東京の内陸といったことから、候補はオオタカかサシバのいずれも幼鳥というあたりに行き着くかと思います。
そこからオオタカに絞り込めることを、いくつかのポイントから説明します。
【1】プロポーション
まず、すでに指摘がありますが、体のプロポーションが異なります。具体的にはたたんだ翼と尾の長さの関係が異なるのです。
サシバは下記リンク(新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版)のp. 76のページ左上の写真(1)が、真横に近い角度で撮影されており、わかりやすいですが、たたんだ翼の先端は尾の先端より少しだけ短い程度に見えます。
これに対しオオタカは、下記リンクのp. 74のページ左下の写真(3)の幼鳥がわかりやすいと思いますが、たたんだ翼の先端は尾の先端よりはるかに短く、尾は大部分がたたんだ翼の先端の先に出ています。
お示しの写真の鳥はたたんだ翼の先端が尾をほとんどカバーしておらず、オオタカの特徴にあいます。
こういったプロポーションの点はタカの仲間にかぎらず、いろいろな鳥で重要な識別のポイントになることがありますので羽色ばかりでなくこの点にも注意することが必要です。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
オオタカ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=75
【2】喉の縦斑
これもすでに指摘があるとおり、サシバの幼鳥は喉の中央にくっきりと濃い縦斑が一本あります(下記リンク、新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版のp. 77左上の写真(5)をご覧ください)。
お示しの写真の鳥にはそういった喉の縦斑はありません。
失礼して喉の見えるカットの頭部を切り出して無理に拡大してみましたが、喉は全体にクリーム白色らしいことがおわかりと思います。
この点からサシバは除外されます。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
【3】虹彩色
虹彩色はサシバでもオオタカでも巣内雛から成長するに従い変化します。
サシバ幼鳥の虹彩色は生まれた年の夏(下記リンク、新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版p. 77左上の写真(5))では暗色ですし、さらに時間が経過して10月(同書p.76左下の図(3))でも暗色です。
これに対しオオタカの幼鳥は生まれた年の夏ですでに淡黄色です(下記リンク、「ワシタカ・ハヤブサ識別図鑑」平凡社、p.85下段)。
お示しの画像の鳥は虹彩色が淡黄色で、サシバの幼鳥は除外され、オオタカ幼鳥の特徴にあいます。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
オオタカ
https://i-zukan.jp/contents/27/viewer?genre=1&page=85
【4】羽色など
上記のリンクなどからサシバ幼鳥の顔をご覧になると、嘴の基部から目先が白っぽく、目の周囲から耳羽が黒っぽく、虹彩も黒っぽいこととあいまって、顔の前端側が白っぽく、中央付近が黒く見えます。
そして黒色の顔の上に接している眉斑の淡色は幅広く見えます。
これに対してオオタカは虹彩が淡いことも手伝って、嘴の基部から目先が白っぽくて顔が黒いという対比がありません。
また眉斑は確かに淡いですが太く目立つというほどではありません。
さらに体の下面の縦斑のようす、たたんだ翼の雨覆のようすなども、オオタカ幼鳥によくあうのがわかると思います。
またお示しの個体の全体に赤錆色の感じはオオタカ幼鳥に特徴的だと思います。
サシバ幼鳥の場合はもっと、クリーム色と焦茶色の鳥という印象を受けると私は思います。
【5】行動
オオタカは飛んでいる鳥を捕食します。
場所や個体にもよりますがドバトは代表的な餌生物です。
これに対し、サシバは鳥を食べないわけではありませんが、主要な餌は地上にいるヘビやカエル、昆虫などです(下記リンクの「原色日本野鳥生態図鑑<陸鳥編>」(平凡社)を見てください)。お示しの画像の鳥はこの点からもオオタカで矛盾がないことになります。
サシバ(p. 158 左列)
https://i-zukan.jp/contents/34/viewer?genre=1&page=167
オオタカ(p. 155 左列)
https://i-zukan.jp/contents/34/viewer?genre=1&page=164
以上、参考になれば幸いです。
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公園で猛禽が鳥を捕食している場面に遭遇されたのですね。さぞかし興奮なさったことと思います。
さてこの鳥ですが、すでに名前が出ているオオタカの今年生まれの幼鳥でよろしいと思います。
大まかな絞り込みとして、ハト(餌となっているのはご指摘のようにドバトだと思います)よりかなり大きく、全体に褐色で体下面は淡く、体下面に縦斑があり、また淡色の眉斑がある、観察地が東京の内陸といったことから、候補はオオタカかサシバのいずれも幼鳥というあたりに行き着くかと思います。
そこからオオタカに絞り込めることを、いくつかのポイントから説明します。
【1】プロポーション
まず、すでに指摘がありますが、体のプロポーションが異なります。具体的にはたたんだ翼と尾の長さの関係が異なるのです。
サシバは下記リンク(新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版)のp. 76のページ左上の写真(1)が、真横に近い角度で撮影されており、わかりやすいですが、たたんだ翼の先端は尾の先端より少しだけ短い程度に見えます。
これに対しオオタカは、下記リンクのp. 74のページ左下の写真(3)の幼鳥がわかりやすいと思いますが、たたんだ翼の先端は尾の先端よりはるかに短く、尾は大部分がたたんだ翼の先端の先に出ています。
お示しの写真の鳥はたたんだ翼の先端が尾をほとんどカバーしておらず、オオタカの特徴にあいます。
こういったプロポーションの点はタカの仲間にかぎらず、いろいろな鳥で重要な識別のポイントになることがありますので羽色ばかりでなくこの点にも注意することが必要です。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
オオタカ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=75
【2】喉の縦斑
これもすでに指摘があるとおり、サシバの幼鳥は喉の中央にくっきりと濃い縦斑が一本あります(下記リンク、新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版のp. 77左上の写真(5)をご覧ください)。
お示しの写真の鳥にはそういった喉の縦斑はありません。
失礼して喉の見えるカットの頭部を切り出して無理に拡大してみましたが、喉は全体にクリーム白色らしいことがおわかりと思います。
この点からサシバは除外されます。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
【3】虹彩色
虹彩色はサシバでもオオタカでも巣内雛から成長するに従い変化します。
サシバ幼鳥の虹彩色は生まれた年の夏(下記リンク、新編「日本の野鳥550山野の鳥」文一総合出版p. 77左上の写真(5))では暗色ですし、さらに時間が経過して10月(同書p.76左下の図(3))でも暗色です。
これに対しオオタカの幼鳥は生まれた年の夏ですでに淡黄色です(下記リンク、「ワシタカ・ハヤブサ識別図鑑」平凡社、p.85下段)。
お示しの画像の鳥は虹彩色が淡黄色で、サシバの幼鳥は除外され、オオタカ幼鳥の特徴にあいます。
サシバ
https://i-zukan.jp/contents/6/viewer?genre=1&page=77
オオタカ
https://i-zukan.jp/contents/27/viewer?genre=1&page=85
【4】羽色など
上記のリンクなどからサシバ幼鳥の顔をご覧になると、嘴の基部から目先が白っぽく、目の周囲から耳羽が黒っぽく、虹彩も黒っぽいこととあいまって、顔の前端側が白っぽく、中央付近が黒く見えます。
そして黒色の顔の上に接している眉斑の淡色は幅広く見えます。
これに対してオオタカは虹彩が淡いことも手伝って、嘴の基部から目先が白っぽくて顔が黒いという対比がありません。
また眉斑は確かに淡いですが太く目立つというほどではありません。
さらに体の下面の縦斑のようす、たたんだ翼の雨覆のようすなども、オオタカ幼鳥によくあうのがわかると思います。
またお示しの個体の全体に赤錆色の感じはオオタカ幼鳥に特徴的だと思います。
サシバ幼鳥の場合はもっと、クリーム色と焦茶色の鳥という印象を受けると私は思います。
【5】行動
オオタカは飛んでいる鳥を捕食します。
場所や個体にもよりますがドバトは代表的な餌生物です。
これに対し、サシバは鳥を食べないわけではありませんが、主要な餌は地上にいるヘビやカエル、昆虫などです(下記リンクの「原色日本野鳥生態図鑑<陸鳥編>」(平凡社)を見てください)。お示しの画像の鳥はこの点からもオオタカで矛盾がないことになります。
サシバ(p. 158 左列)
https://i-zukan.jp/contents/34/viewer?genre=1&page=167
オオタカ(p. 155 左列)
https://i-zukan.jp/contents/34/viewer?genre=1&page=164
以上、参考になれば幸いです。
回答日2019年08月19日
やまぼうし
根拠を示し、細かく説明頂きオオタカの若鳥の確信を持てました。ありがとうございました。
回答日2019年08月29日
回答
かのこしょうびん
オオタカの若鳥と思われます。
回答日2019年08月15日