専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生(山階鳥類研究所)から回答がありましたので掲載します
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お示しの画像は種名としてはおっしゃるとおりダイサギで間違いありません。
> 口角の切れ目が後ろまで・・・ということでダイサギ!と思いました
この件は確かにおっしゃるとおりです。失礼して画像を切り出して補助線を引かせていただき、さらに参考画像としてチュウサギの頭部の画像を掲示しましたが、目の後端と口角の前後関係で、口角が目の後端より後ろならダイサギ、前ならチュウサギという識別点があります。ですが経験をつんだ観察者がこの点をわざわざ見るのは、比較的特殊な場合に限られるかもしれません。たとえば、ほかの特徴が使えない巣内雛を見分けるさいに研究者はこの識別点を使っています。
では口角以外にどこを見るかですが、この画像の場合、目先が広範囲に緑色という点で、繁殖期のダイサギであることが文句なく決まります(チュウサギでも黄色い目先がわずかに緑色がかることはありますが、お示しの画像のように広範囲に緑色になることはありません)。そして、ダイサギとチュウサギについて多くの例を見慣れると、この鳥がくちばしが長大であることや、首が長いことで、口角の細かい検討をしなくても、あるいは遠望しているためにそれが見づらくてもこの鳥がダイサギであることがわかるようになります(両種が一緒にいる光景の画像を参考までに掲示します)。
お示しの写真も1コマ目を一瞥しただけで、口角を検討しなくても、経験のある観察者はぱっと種ダイサギだとわかります。チュウサギの目先は周年黄色であるほか、くちばしは見慣れればはっきりと短いです。長さの絶対値もそうですが、むしろ太さと長さの比の上で、チュウサギははっきりと短く見えるのが普通です。
さて、「亜種チュウダイサギ」の、「亜種」についてご説明しましょう。亜種は、ある種をみたとき、地理的に少しずつ違う特徴をもつものがいる場合に、種のワンランク下のカテゴリとして亜種というカテゴリを設けて名付けるわけです。日本で見られる種ダイサギの亜種は、繁殖分布によってわけられるふたつがあります。すなわち、大陸で繁殖して日本には越冬のために渡ってくる亜種ダイサギと、日本で繁殖して冬越しは日本列島からフィリピンにかけておこなう亜種チュウダイサギです。世界的にいうと、亜種ダイサギは、ヨーロッパからユーラシアの比較的北よりで広く繁殖し、バイカル地方、アムール地方、ウスリー地方で繁殖しします。また亜種チュウダイサギは、南アジア、中国東部、朝鮮半島、日本などで繁殖するわけです。両方とも種としてはダイサギです。
種ダイサギの中の亜種ダイサギというネーミングは分かりづらいかもしれませんが、日本に複数の亜種のある鳥では、ひとつの(基本的にいちばんよく見られる)亜種の和名に、種和名と同じ和名を使うことになっています。なお亜種ダイサギの和名として、亜種オオダイサギという名前を使うこともあります。
それで、亜種を識別するのかという話ですが、亜種は一般的に必ず識別できるものではありません。書籍の中には亜種が必ず見分けられるように書いてあるものもありますがそれは不適当です。亜種ダイサギと亜種チュウダイサギについても、違いは体の大きさにあり、各部位の測定値には重複がありますので形態からすべての個体を区別することはできません。脚の脛の上部は淡色ですが、これも両亜種に見られます(この特徴から種ダイサギ、あるいは亜種ダイサギを「モモジロ」、亜種チュウダイサギを「コモモジロ」と呼んだりします)。
なお、越冬期には南日本では亜種ダイサギが越冬に渡来し、亜種チュウダイサギの一部も残留しています。その場合に、同じ種ダイサギなのに極端に大小のある2個体が並んでいるのを見ることがあり、大きい方が亜種ダイサギ、小さいほうが亜種チュウダイサギだろうと推測される場合はあります。
お示しの画像の鳥も1個体だけですし私には亜種の識別はできません。撮影時期が4月ですので、この鳥がこのまま日本で繁殖すれば亜種チュウダイサギで、これから大陸まで飛んでゆけば亜種ダイサギと言えるのですが、それはこの写真だけからはわかりません。他の多くの亜種のある種と同様、この場合も種ダイサギと言えれば十分だろうと思います。
※ なお種によってはたとえば、種アカヒゲの亜種アカヒゲ(奄美大島などで繁殖)と亜種ホントウアカヒゲ(沖縄島などで繁殖)などのように、羽色ではっきりと区別できるものもあります。
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お示しの画像は種名としてはおっしゃるとおりダイサギで間違いありません。
> 口角の切れ目が後ろまで・・・ということでダイサギ!と思いました
この件は確かにおっしゃるとおりです。失礼して画像を切り出して補助線を引かせていただき、さらに参考画像としてチュウサギの頭部の画像を掲示しましたが、目の後端と口角の前後関係で、口角が目の後端より後ろならダイサギ、前ならチュウサギという識別点があります。ですが経験をつんだ観察者がこの点をわざわざ見るのは、比較的特殊な場合に限られるかもしれません。たとえば、ほかの特徴が使えない巣内雛を見分けるさいに研究者はこの識別点を使っています。
では口角以外にどこを見るかですが、この画像の場合、目先が広範囲に緑色という点で、繁殖期のダイサギであることが文句なく決まります(チュウサギでも黄色い目先がわずかに緑色がかることはありますが、お示しの画像のように広範囲に緑色になることはありません)。そして、ダイサギとチュウサギについて多くの例を見慣れると、この鳥がくちばしが長大であることや、首が長いことで、口角の細かい検討をしなくても、あるいは遠望しているためにそれが見づらくてもこの鳥がダイサギであることがわかるようになります(両種が一緒にいる光景の画像を参考までに掲示します)。
お示しの写真も1コマ目を一瞥しただけで、口角を検討しなくても、経験のある観察者はぱっと種ダイサギだとわかります。チュウサギの目先は周年黄色であるほか、くちばしは見慣れればはっきりと短いです。長さの絶対値もそうですが、むしろ太さと長さの比の上で、チュウサギははっきりと短く見えるのが普通です。
さて、「亜種チュウダイサギ」の、「亜種」についてご説明しましょう。亜種は、ある種をみたとき、地理的に少しずつ違う特徴をもつものがいる場合に、種のワンランク下のカテゴリとして亜種というカテゴリを設けて名付けるわけです。日本で見られる種ダイサギの亜種は、繁殖分布によってわけられるふたつがあります。すなわち、大陸で繁殖して日本には越冬のために渡ってくる亜種ダイサギと、日本で繁殖して冬越しは日本列島からフィリピンにかけておこなう亜種チュウダイサギです。世界的にいうと、亜種ダイサギは、ヨーロッパからユーラシアの比較的北よりで広く繁殖し、バイカル地方、アムール地方、ウスリー地方で繁殖しします。また亜種チュウダイサギは、南アジア、中国東部、朝鮮半島、日本などで繁殖するわけです。両方とも種としてはダイサギです。
種ダイサギの中の亜種ダイサギというネーミングは分かりづらいかもしれませんが、日本に複数の亜種のある鳥では、ひとつの(基本的にいちばんよく見られる)亜種の和名に、種和名と同じ和名を使うことになっています。なお亜種ダイサギの和名として、亜種オオダイサギという名前を使うこともあります。
それで、亜種を識別するのかという話ですが、亜種は一般的に必ず識別できるものではありません。書籍の中には亜種が必ず見分けられるように書いてあるものもありますがそれは不適当です。亜種ダイサギと亜種チュウダイサギについても、違いは体の大きさにあり、各部位の測定値には重複がありますので形態からすべての個体を区別することはできません。脚の脛の上部は淡色ですが、これも両亜種に見られます(この特徴から種ダイサギ、あるいは亜種ダイサギを「モモジロ」、亜種チュウダイサギを「コモモジロ」と呼んだりします)。
なお、越冬期には南日本では亜種ダイサギが越冬に渡来し、亜種チュウダイサギの一部も残留しています。その場合に、同じ種ダイサギなのに極端に大小のある2個体が並んでいるのを見ることがあり、大きい方が亜種ダイサギ、小さいほうが亜種チュウダイサギだろうと推測される場合はあります。
お示しの画像の鳥も1個体だけですし私には亜種の識別はできません。撮影時期が4月ですので、この鳥がこのまま日本で繁殖すれば亜種チュウダイサギで、これから大陸まで飛んでゆけば亜種ダイサギと言えるのですが、それはこの写真だけからはわかりません。他の多くの亜種のある種と同様、この場合も種ダイサギと言えれば十分だろうと思います。
※ なお種によってはたとえば、種アカヒゲの亜種アカヒゲ(奄美大島などで繁殖)と亜種ホントウアカヒゲ(沖縄島などで繁殖)などのように、羽色ではっきりと区別できるものもあります。
回答日2018年07月17日
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