専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生から回答がありましたので掲載します(事務局)
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ミズナギドリ類とカモメ類の識別は、図鑑を見ながら手探りで識別していっている場合、なかなか難しいことと思います。
ご質問の中で体のつくりの話をされていますので、そこからゆきましょう。
ミズナギドリ類とカモメ類は海の上を飛んで生活する鳥という意味で、ごくごく大まかに言えば生態が近くて、体のつくりも似ているのですが、じつは生態に違いがあり、見慣れると体の作りにもいろいろ違いがあります。まずカモメ類のほうが翼の前後の幅があるように見え、ミズナギドリ類のほうが、翼が細長く見えるでしょう。またミズナギドリ類のほうが、体が細いです。
それから尾の形が、カモメ類は角尾で、尾羽の各羽の長さがほぼ同じで、しっかりたたむとほぼ四角く見え、広げると扇型です。一方ミズナギドリ類は尾が楔(くさび)状で、中央尾羽から外側に向かって尾羽が明瞭に短くなって見えます(図をご覧ください)。
さらに嘴を横から見たとき、カモメ類では嘴の上縁はほぼ直線的で上下縁がおおむね平行に見え、かつ嘴全体が比較的太く(ただし嘴の太さは体の小さな種では細くなります)、上嘴先端のカギ形の湾曲はミズナギドリ類よりきつくありません。これに対し、ミズナギドリ類は嘴が比較的細めに見え、特に嘴を横から見たときは嘴の上縁の中央がへこんで見えるでしょう(それにはミズナギドリ類をふくむミズナギドリ目を「管鼻目」というように、上嘴の基部に管状の鼻孔があって、横から見ると膨らんで見えることも寄与しています)。そして上嘴先端のカギ形の湾曲がきついです(図をご覧ください)。
お示しの画像の2コマ目をみていただくと、翼の前後の幅が広く、胴がでっぷりとしているのがわかります。ただ、翼の細長さ、前後の幅というのは見る角度などによっても異なりますので、初めのうち分かりづらいかもしれません。尾がはっきりした楔形ではないこと、また横から見た嘴の上下を限る線が平行に見えることはおわかりだと思います。これらの体のつくりの特徴からこの鳥はミズナギドリ類ではなくてカモメ類だとわかります。
さらに行動ですが、ミズナギドリ類を陸上から特徴がわかるほど見られる機会というのは、繁殖地の島から観察するような特殊な状況を除けば頻繁にあるものではありません。またミズナギドリ類は水面すれすれを「水を薙ぐ」ようにして飛ぶので、通常は水面をバックに見ることしかありません。空をバックに飛ぶ姿が見られるのは、繁殖地の島以外では、観察がつらいような大しけの船上からぐらいしかないのではないかと思います(その際はミズナギドリ類も水面すれすれだけを飛ぶことができず、水面よりかなり上を飛ぶことがあります)。
色彩や模様(羽色と嘴の色)を検討しても、嘴がピンクで先端が黒い、体全体に濃い灰褐色で尾は黒いが、額と喉が白い、腰が白いといった特徴をあわせもつミズナギドリ類はいません。特に全体に暗色に見えて腰だけがはっきり白い日本産ミズナギドリ類はいません(ただし海外には上面全体が暗色で腰の白が目立つミズナギドリがいます)。
この個体は上述のような形態や羽色から、お察しのとおり、ウミネコの若い個体だと思います。
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ミズナギドリ類とカモメ類の識別は、図鑑を見ながら手探りで識別していっている場合、なかなか難しいことと思います。
ご質問の中で体のつくりの話をされていますので、そこからゆきましょう。
ミズナギドリ類とカモメ類は海の上を飛んで生活する鳥という意味で、ごくごく大まかに言えば生態が近くて、体のつくりも似ているのですが、じつは生態に違いがあり、見慣れると体の作りにもいろいろ違いがあります。まずカモメ類のほうが翼の前後の幅があるように見え、ミズナギドリ類のほうが、翼が細長く見えるでしょう。またミズナギドリ類のほうが、体が細いです。
それから尾の形が、カモメ類は角尾で、尾羽の各羽の長さがほぼ同じで、しっかりたたむとほぼ四角く見え、広げると扇型です。一方ミズナギドリ類は尾が楔(くさび)状で、中央尾羽から外側に向かって尾羽が明瞭に短くなって見えます(図をご覧ください)。
さらに嘴を横から見たとき、カモメ類では嘴の上縁はほぼ直線的で上下縁がおおむね平行に見え、かつ嘴全体が比較的太く(ただし嘴の太さは体の小さな種では細くなります)、上嘴先端のカギ形の湾曲はミズナギドリ類よりきつくありません。これに対し、ミズナギドリ類は嘴が比較的細めに見え、特に嘴を横から見たときは嘴の上縁の中央がへこんで見えるでしょう(それにはミズナギドリ類をふくむミズナギドリ目を「管鼻目」というように、上嘴の基部に管状の鼻孔があって、横から見ると膨らんで見えることも寄与しています)。そして上嘴先端のカギ形の湾曲がきついです(図をご覧ください)。
お示しの画像の2コマ目をみていただくと、翼の前後の幅が広く、胴がでっぷりとしているのがわかります。ただ、翼の細長さ、前後の幅というのは見る角度などによっても異なりますので、初めのうち分かりづらいかもしれません。尾がはっきりした楔形ではないこと、また横から見た嘴の上下を限る線が平行に見えることはおわかりだと思います。これらの体のつくりの特徴からこの鳥はミズナギドリ類ではなくてカモメ類だとわかります。
さらに行動ですが、ミズナギドリ類を陸上から特徴がわかるほど見られる機会というのは、繁殖地の島から観察するような特殊な状況を除けば頻繁にあるものではありません。またミズナギドリ類は水面すれすれを「水を薙ぐ」ようにして飛ぶので、通常は水面をバックに見ることしかありません。空をバックに飛ぶ姿が見られるのは、繁殖地の島以外では、観察がつらいような大しけの船上からぐらいしかないのではないかと思います(その際はミズナギドリ類も水面すれすれだけを飛ぶことができず、水面よりかなり上を飛ぶことがあります)。
色彩や模様(羽色と嘴の色)を検討しても、嘴がピンクで先端が黒い、体全体に濃い灰褐色で尾は黒いが、額と喉が白い、腰が白いといった特徴をあわせもつミズナギドリ類はいません。特に全体に暗色に見えて腰だけがはっきり白い日本産ミズナギドリ類はいません(ただし海外には上面全体が暗色で腰の白が目立つミズナギドリがいます)。
この個体は上述のような形態や羽色から、お察しのとおり、ウミネコの若い個体だと思います。
回答日2018年06月19日
akagera78
丁寧に答えていただき、ありがとうございます。すっきりいたしました。
回答日2018年06月21日
回答