専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生(山階鳥類研究所)から回答がありましたので掲載します。
写真は2枚ありますのでコメントに追加します。
* * *
この画像、えっ?と思いますよね。でも、この脚の主はツミじゃなくて、ムクドリだと思います。
ぱっと見てツミといちばん大きく異なるところは爪です。ツミは巣立ち前でも、細長くてきつく湾曲した黒い爪があって、特に後趾(後ろ向きの趾(あしゆび))と内趾(前向きの三本の趾のいちばん内側の趾)の爪は長いです。参考のため、ツミ雄の趾の画像を掲載しましたのでご覧になってください(鳥類標識調査のために環境省の許可のもとに捕獲した個体の画像です)。
またお示しの画像の中のツミも、ちょっとわかりづらいですが、画像を拡大すると右足の内趾の爪は立派なのがわかると思います。
もうひとつのポイントは脚の長さです。鳥の形態学で使われる脚の測定部位に、「跗蹠長(ふしょちょう)」があり、古典的な図鑑類には値が出ています。どこの長さかというと、鳥の脚のまん中あたりにある後ろ向きの関節(かかと)から、趾が分かれる場所の関節までをつなぐ、「跗蹠骨(中足足根骨)」の長さです。その跗蹠長がどのくらいか分かれば役立ちそうですが、幸い、お示しの画像はツミの脚も問題の脚も画面に対しておおむね平行で、長さの比較ができそうです。そこでお示しの画像をトリミングして、ツミと問題の脚の跗蹠長にあたる長さを赤い線で示してみました。これに物差しをあてて測ってみると、問題の脚の跗蹠長はツミ雄のほぼ2/3です。ツミの雄の跗蹠長は『原色日本鳥類図鑑』(増補改訂版,1965. 小林桂助. 保育社. )によると、47mmです(ツミをはじめ猛禽類は、雌雄でそうとう大きさが異なる鳥ですので測定値を見るときは性別を意識することが必要です)。そこから問題の脚の跗蹠長を計算してみると、47×2/3=31.3mmとなります。同じ書籍によるとムクドリの跗蹠長は28〜33mmということですので、計算した値がぴったり実際の測定値の範囲に入りました。
また測定値まで持ち出さなくても、画像から、問題の脚の持ち主は、おおざっぱに言ってスズメより大きくキジバトなどより小さい鳥だろうと推察できます。生息地が町田市という、東京近郊の丘陵の緑の多い住宅都市で、大きさがスズメとキジバトの中間ぐらいで、脚がわりあいしっかりしていて橙色といったところから考えをめぐらせてみると、ムクドリがいちばんありそうな鳥だとわかるでしょう。6月中旬であればムクドリの巣立ちビナがたくさん出ていると思われ、この時期のツミの獲物のなかのそれなりの割合を占めているかもしれません。
こういった点からこれはムクドリの脚だと思います。脚全体の形や色彩、脛の羽毛などもムクドリとして矛盾はなさそうです。
ちなみに、ツミが、ぱっと見て一回り小さいムクドリと見間違えかねない細い趾と跗蹠を持ってるのはおどろきですね。このように華奢で細く、長い趾と脚は、飛びながら小鳥を捕まえるツミ、ハイタカ、オオタカなどハイタカ属(Accipiter属)の特徴です。体の大きさの差を割り引いても、地上のネズミなどを捕らえるノスリの脚はもっと頑丈ですし、カエルやトカゲを捕まえているサシバの趾はぷくぷくと太っていて脚全体がもさっとしています。
写真は2枚ありますのでコメントに追加します。
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この画像、えっ?と思いますよね。でも、この脚の主はツミじゃなくて、ムクドリだと思います。
ぱっと見てツミといちばん大きく異なるところは爪です。ツミは巣立ち前でも、細長くてきつく湾曲した黒い爪があって、特に後趾(後ろ向きの趾(あしゆび))と内趾(前向きの三本の趾のいちばん内側の趾)の爪は長いです。参考のため、ツミ雄の趾の画像を掲載しましたのでご覧になってください(鳥類標識調査のために環境省の許可のもとに捕獲した個体の画像です)。
またお示しの画像の中のツミも、ちょっとわかりづらいですが、画像を拡大すると右足の内趾の爪は立派なのがわかると思います。
もうひとつのポイントは脚の長さです。鳥の形態学で使われる脚の測定部位に、「跗蹠長(ふしょちょう)」があり、古典的な図鑑類には値が出ています。どこの長さかというと、鳥の脚のまん中あたりにある後ろ向きの関節(かかと)から、趾が分かれる場所の関節までをつなぐ、「跗蹠骨(中足足根骨)」の長さです。その跗蹠長がどのくらいか分かれば役立ちそうですが、幸い、お示しの画像はツミの脚も問題の脚も画面に対しておおむね平行で、長さの比較ができそうです。そこでお示しの画像をトリミングして、ツミと問題の脚の跗蹠長にあたる長さを赤い線で示してみました。これに物差しをあてて測ってみると、問題の脚の跗蹠長はツミ雄のほぼ2/3です。ツミの雄の跗蹠長は『原色日本鳥類図鑑』(増補改訂版,1965. 小林桂助. 保育社. )によると、47mmです(ツミをはじめ猛禽類は、雌雄でそうとう大きさが異なる鳥ですので測定値を見るときは性別を意識することが必要です)。そこから問題の脚の跗蹠長を計算してみると、47×2/3=31.3mmとなります。同じ書籍によるとムクドリの跗蹠長は28〜33mmということですので、計算した値がぴったり実際の測定値の範囲に入りました。
また測定値まで持ち出さなくても、画像から、問題の脚の持ち主は、おおざっぱに言ってスズメより大きくキジバトなどより小さい鳥だろうと推察できます。生息地が町田市という、東京近郊の丘陵の緑の多い住宅都市で、大きさがスズメとキジバトの中間ぐらいで、脚がわりあいしっかりしていて橙色といったところから考えをめぐらせてみると、ムクドリがいちばんありそうな鳥だとわかるでしょう。6月中旬であればムクドリの巣立ちビナがたくさん出ていると思われ、この時期のツミの獲物のなかのそれなりの割合を占めているかもしれません。
こういった点からこれはムクドリの脚だと思います。脚全体の形や色彩、脛の羽毛などもムクドリとして矛盾はなさそうです。
ちなみに、ツミが、ぱっと見て一回り小さいムクドリと見間違えかねない細い趾と跗蹠を持ってるのはおどろきですね。このように華奢で細く、長い趾と脚は、飛びながら小鳥を捕まえるツミ、ハイタカ、オオタカなどハイタカ属(Accipiter属)の特徴です。体の大きさの差を割り引いても、地上のネズミなどを捕らえるノスリの脚はもっと頑丈ですし、カエルやトカゲを捕まえているサシバの趾はぷくぷくと太っていて脚全体がもさっとしています。
回答日2018年06月26日
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