専門家の回答
吹春先生(千葉中博)
吹春先生(千葉県立中央博物館)から回答がありましたので掲載します(事務局)
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よく知られているタマゴタケですが,学名は結構変遷があります.
最初は欧州産のものと同じ A. caesarea という学名でしたが,1987年の保育社の図鑑で A. hemibapha と表記され,最近,ロシア沿海州で記載された A. caesareoides が正しいのだとされました.
ところが,今年の菌学会で鳥取大学の遠藤直樹先生による,日本には肉眼で見分けることが難しい赤いタマゴタケがあり,1つは A. caesareoides,もうひとつは未知種と思われる,という仰天発表をうかがいました(何も見ずに書いているのですがこんな内容だったとおもいます).前者は長野県などから日本の北の方に,後者は西日本を中心に分布しているとのこと.写真は旭川からのものなので,沿海州と同じ A. caesareoides かもしれませんね.
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図鑑jpタマゴタケに関する掲載ページ一覧
https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=18968
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よく知られているタマゴタケですが,学名は結構変遷があります.
最初は欧州産のものと同じ A. caesarea という学名でしたが,1987年の保育社の図鑑で A. hemibapha と表記され,最近,ロシア沿海州で記載された A. caesareoides が正しいのだとされました.
ところが,今年の菌学会で鳥取大学の遠藤直樹先生による,日本には肉眼で見分けることが難しい赤いタマゴタケがあり,1つは A. caesareoides,もうひとつは未知種と思われる,という仰天発表をうかがいました(何も見ずに書いているのですがこんな内容だったとおもいます).前者は長野県などから日本の北の方に,後者は西日本を中心に分布しているとのこと.写真は旭川からのものなので,沿海州と同じ A. caesareoides かもしれませんね.
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図鑑jpタマゴタケに関する掲載ページ一覧
https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=18968
回答日2018年08月15日
おにぎりけむし
千葉県立中央博物館
植物学研究科長
吹春 俊光先生
お返事まことにありがとうございます。まさか先生のご回答を頂けるとは思っていなかったので、大変光栄に存じます。
きのこの分類学について浅学のために、赤いタマゴタケについてはセイヨウタマゴタケと日本でよく見られるとされるタマゴタケしか知らなかったので、先生のご回答された内容に驚いております。
先生の仰られる発表における、西日本の未知種は、DNAの解析などから推定されたのでしょうか。もしその報告が確かならば、どのような経緯で2種のタマゴタケが存在するようになったのか、また、それらにどのような差異があるか大変気になります。
昨今のきのこの分子系統学による分類の変化は、一種のパラダイムシフトを見ているようで大変面白く思っております。今回のタマゴタケもそのように外見的な特徴からは峻別することが難しかったり、ハラタケ類と旧腹菌類のように外見的な特徴から近縁であることを見いだしにくかったりするものが明らかになってゆく様子は、私のような素人でもきのこの学問が未だ窮まり知らないことを感じさせ、興奮させられます。
最後に、素っ気ない投稿をした浅学菲才なる私に、これほどまで丁寧なご回答をされた先生に、改めて深甚なる感謝を申し上げます。この度は本当にありがとうございました。分野はやや離れておりますが、いつか私自身もきのこに携わる研究がしてみたいです。
おにぎりけむし
植物学研究科長
吹春 俊光先生
お返事まことにありがとうございます。まさか先生のご回答を頂けるとは思っていなかったので、大変光栄に存じます。
きのこの分類学について浅学のために、赤いタマゴタケについてはセイヨウタマゴタケと日本でよく見られるとされるタマゴタケしか知らなかったので、先生のご回答された内容に驚いております。
先生の仰られる発表における、西日本の未知種は、DNAの解析などから推定されたのでしょうか。もしその報告が確かならば、どのような経緯で2種のタマゴタケが存在するようになったのか、また、それらにどのような差異があるか大変気になります。
昨今のきのこの分子系統学による分類の変化は、一種のパラダイムシフトを見ているようで大変面白く思っております。今回のタマゴタケもそのように外見的な特徴からは峻別することが難しかったり、ハラタケ類と旧腹菌類のように外見的な特徴から近縁であることを見いだしにくかったりするものが明らかになってゆく様子は、私のような素人でもきのこの学問が未だ窮まり知らないことを感じさせ、興奮させられます。
最後に、素っ気ない投稿をした浅学菲才なる私に、これほどまで丁寧なご回答をされた先生に、改めて深甚なる感謝を申し上げます。この度は本当にありがとうございました。分野はやや離れておりますが、いつか私自身もきのこに携わる研究がしてみたいです。
おにぎりけむし
回答日2018年08月25日
吹春先生(千葉中博)
おにぎりけむし様
日本のタマゴタケが,セイヨウタマゴタケ A. caesarea からA. hemibapha とされたのは,形態比較の研究からだったようです.しかし,日本のタマゴタケには A. caesareoidesと未記載種の2種がある,という結果は,遺伝子をつかった研究ではじめて判明したことです.現在では遺伝子をつかわないと,本当のことは(本当のことに肉薄することは),わからなくなってしまったようですね.
タマゴタケは氷山の一角で,ベニタケ科やイグチ科なども,過去に形態比較だけで欧州や北米で記載された学名を与えられた日本産のものも,遺伝子をつかった比較によって実は別種であることが判明し,別の名前に(新種などへと),どんどん,つけかえないといけなくなってしまったようです.たいへんな時代になってしまいましたね.
日本のタマゴタケが,セイヨウタマゴタケ A. caesarea からA. hemibapha とされたのは,形態比較の研究からだったようです.しかし,日本のタマゴタケには A. caesareoidesと未記載種の2種がある,という結果は,遺伝子をつかった研究ではじめて判明したことです.現在では遺伝子をつかわないと,本当のことは(本当のことに肉薄することは),わからなくなってしまったようですね.
タマゴタケは氷山の一角で,ベニタケ科やイグチ科なども,過去に形態比較だけで欧州や北米で記載された学名を与えられた日本産のものも,遺伝子をつかった比較によって実は別種であることが判明し,別の名前に(新種などへと),どんどん,つけかえないといけなくなってしまったようです.たいへんな時代になってしまいましたね.
回答日2018年08月29日
回答