専門家の回答
平岡先生(山階鳥研)
平岡先生(山階鳥類研究所)から回答がありましたので掲載します(事務局)
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お示しの画像の鳥はコサメビタキの幼鳥でよろしいと思います。
体じゅう点々なのが識別点、と言えれば簡単なのですが、体じゅう点々なのは種の識別点じゃありません。観察経験が豊富な方はご存知のとおり、キビタキもオオルリも幼鳥(巣立ちビナ)は体じゅう点々です。さらに、最新の図鑑でコサメビタキと同じヒタキ科となっている、アカハラ(少し前の図鑑で「大型ツグミ類」とされているグループの鳥)や、ルリビタキやノビタキ(少し前の「小型ツグミ類」とされているグループの鳥)も最初に飛べるようになった幼羽は体じゅうだんだらです。事務局から、「ノビタキの幼鳥にも似て見えます。」というtwitter上でのコメントが紹介されていますが、それはこういう事情です。
(余談ですが、昔、ヒタキ科という科は大所帯で、ウグイスの仲間、ヨシキリの仲間、ムシクイの仲間など、幼鳥がだんだらじゃない、ぱっと見での成鳥との区別が難しい仲間と、上記の、いわゆる「大型ツグミ類(ツグミ、アカハラ、クロツグミなど)」、「小型ツグミ類(ルリビタキ、ノビタキなど)」、それから「狭義のヒタキ類(オオルリ、キビタキ、コサメビタキなど)」といった、幼鳥がだんだらな仲間が混在していました。いかにも変な話だったのですが、予想通りというべきか、DNAの分析で、幼鳥がだんだらじゃないグループと、幼鳥がだんだらなグループは、他人ということがわかり、日本鳥学会が2012年に出版した「日本鳥類目録改訂第7版」にそれが反映されて、最新の図鑑はその分類に依っているのです)
それでこの鳥ですが、足がごく短く、頭が大きめで,目がくりっとしているといった特徴から、「狭義のヒタキ類(オオルリ、キビタキ、コサメビタキなど)」ということがわかります。そこからの絞り込みはちょっと大変かもしれませんが、全体に灰色と白の羽色ということから、サメビタキ、コサメビタキ、エゾビタキのいずれかということが推測されます。このうちエゾビタキは日本での繁殖がないことから除外され(8月18日ですとまだ北の繁殖地から南下してくるのは早いでしょう)、サメビタキ、コサメビタキのどちらかとなりますが、目の回りや目先が広く白い、胸が白っぽいといった成鳥でも見られる特徴がこの鳥でもわかることからコサメビタキでよいと思います。体のつくりで言いますと、外から見える三列風切の長さと、三列風切を越えて見える初列風切の長さを比べたときに、初列風切の飛び出している長さが短く見えることもコサメビタキとの識別を支持しています。またサメビタキ幼鳥の頭部の斑はコサメビタキのように大きくなく、細い軸斑だそうなので、この鳥は頭の斑が大きく丸く見えることもコサメビタキとの識別を支持していると思います。
巣立ち直後のコサメビタキはこのようにだんだらですが、9~10月頃、渡りの途上に、本州の平野部(東京などでも観察できますね)で見られるコサメビタキはこんなにだんだらじゃないことは多くの方がご存知と思います。数ヶ月のうちに、巣立って最初に飛べるようになった羽毛を生え変わらせて、第一回冬羽という成鳥に似た羽衣になるわけですね。とはいえコサメビタキを含めいろんな種で、秋には特定の部位に幼羽が残っていることが知られています。その知識によって、この鳥は今年生まれか、昨年以前生まれかを判断することができるわけです。いろいろな小鳥で、生まれた年と、2歳以上で繁殖経験がある種では、渡り(移動)の行動が異なることが知られているのは、問題の鳥には幼羽が残っているかどうかがわかって、年齢を判断できる知識を研究者が持っているからです。そんなことも念頭に置きながらこの画像をご覧になるのも興味深いかなと思います。
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お示しの画像の鳥はコサメビタキの幼鳥でよろしいと思います。
体じゅう点々なのが識別点、と言えれば簡単なのですが、体じゅう点々なのは種の識別点じゃありません。観察経験が豊富な方はご存知のとおり、キビタキもオオルリも幼鳥(巣立ちビナ)は体じゅう点々です。さらに、最新の図鑑でコサメビタキと同じヒタキ科となっている、アカハラ(少し前の図鑑で「大型ツグミ類」とされているグループの鳥)や、ルリビタキやノビタキ(少し前の「小型ツグミ類」とされているグループの鳥)も最初に飛べるようになった幼羽は体じゅうだんだらです。事務局から、「ノビタキの幼鳥にも似て見えます。」というtwitter上でのコメントが紹介されていますが、それはこういう事情です。
(余談ですが、昔、ヒタキ科という科は大所帯で、ウグイスの仲間、ヨシキリの仲間、ムシクイの仲間など、幼鳥がだんだらじゃない、ぱっと見での成鳥との区別が難しい仲間と、上記の、いわゆる「大型ツグミ類(ツグミ、アカハラ、クロツグミなど)」、「小型ツグミ類(ルリビタキ、ノビタキなど)」、それから「狭義のヒタキ類(オオルリ、キビタキ、コサメビタキなど)」といった、幼鳥がだんだらな仲間が混在していました。いかにも変な話だったのですが、予想通りというべきか、DNAの分析で、幼鳥がだんだらじゃないグループと、幼鳥がだんだらなグループは、他人ということがわかり、日本鳥学会が2012年に出版した「日本鳥類目録改訂第7版」にそれが反映されて、最新の図鑑はその分類に依っているのです)
それでこの鳥ですが、足がごく短く、頭が大きめで,目がくりっとしているといった特徴から、「狭義のヒタキ類(オオルリ、キビタキ、コサメビタキなど)」ということがわかります。そこからの絞り込みはちょっと大変かもしれませんが、全体に灰色と白の羽色ということから、サメビタキ、コサメビタキ、エゾビタキのいずれかということが推測されます。このうちエゾビタキは日本での繁殖がないことから除外され(8月18日ですとまだ北の繁殖地から南下してくるのは早いでしょう)、サメビタキ、コサメビタキのどちらかとなりますが、目の回りや目先が広く白い、胸が白っぽいといった成鳥でも見られる特徴がこの鳥でもわかることからコサメビタキでよいと思います。体のつくりで言いますと、外から見える三列風切の長さと、三列風切を越えて見える初列風切の長さを比べたときに、初列風切の飛び出している長さが短く見えることもコサメビタキとの識別を支持しています。またサメビタキ幼鳥の頭部の斑はコサメビタキのように大きくなく、細い軸斑だそうなので、この鳥は頭の斑が大きく丸く見えることもコサメビタキとの識別を支持していると思います。
巣立ち直後のコサメビタキはこのようにだんだらですが、9~10月頃、渡りの途上に、本州の平野部(東京などでも観察できますね)で見られるコサメビタキはこんなにだんだらじゃないことは多くの方がご存知と思います。数ヶ月のうちに、巣立って最初に飛べるようになった羽毛を生え変わらせて、第一回冬羽という成鳥に似た羽衣になるわけですね。とはいえコサメビタキを含めいろんな種で、秋には特定の部位に幼羽が残っていることが知られています。その知識によって、この鳥は今年生まれか、昨年以前生まれかを判断することができるわけです。いろいろな小鳥で、生まれた年と、2歳以上で繁殖経験がある種では、渡り(移動)の行動が異なることが知られているのは、問題の鳥には幼羽が残っているかどうかがわかって、年齢を判断できる知識を研究者が持っているからです。そんなことも念頭に置きながらこの画像をご覧になるのも興味深いかなと思います。
回答日2018年09月04日
啄木鳥
平岡先生
出張から戻り本サイトをただいま確認したところで、、驚嘆、感謝感激です。
大変わかりやすい、そして図鑑には記載されていないような(私には)かなり専門的なご説明をいただき、大変に勉強になりました。研究者の方々が年齢を判定できる秘密が少しわかったような気がします。鳥がますます好きになりました。図鑑.JPに入って良かったです。本当にありがとうございました。
出張から戻り本サイトをただいま確認したところで、、驚嘆、感謝感激です。
大変わかりやすい、そして図鑑には記載されていないような(私には)かなり専門的なご説明をいただき、大変に勉強になりました。研究者の方々が年齢を判定できる秘密が少しわかったような気がします。鳥がますます好きになりました。図鑑.JPに入って良かったです。本当にありがとうございました。
回答日2018年09月10日
回答