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永田芳男さんの日本全国花行脚

第18回 新しい帰化植物 Indigofera hirsuta インディゴフェラ・ヒルスータ ~沖縄県西表島~

2023-12-18

『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』や『レッドデータプランツ』などでおなじみの植物写真家の永田芳男さん。髭がトレードマークで髭さんと呼ばれていましたが、いまでは髭も真っ白くなりました。三つ子の魂百までで、いまだに植物を追いかけて日本全国花行脚を続けています。旅先で出会った野生の草や木を主体に、時に花の名所なども兼ねて、永田さんが気になった植物をひとつずつ紹介していただきます。

 

本種はマメ科コマツナギ属の帰化植物である。日本では西表島で最初に発見されて、しばらくは西表島でしか見ることができなかった。毎年、何度も西表島には行っているのに見たことがなかったので、いつかは見たいと思っていた植物である。今年はじめて西表島で見ることができた。その後、石垣島でも確認した。現在は西表島、石垣島、宮古島の3島に帰化したようである。

 

 

広く熱帯や亜熱帯に分布しているもののようだ。学名で外国の文献にいくつか当たってみたが、種小名 hirsuta で間違いないようだ。西表島のものは種小名 miniata ではないか、と言う人がいたので、いくつかの国の文献に当たってみた。最近はネットで各国の画像まで簡単に見ることができるので、帰化植物もある程度の知識があれば、随分と探しやすくなった。

台湾などでは畑の雑草状態だと聞く。日本への流入は家畜の飼料に混じってではないかと思う。西表島で見た場所は、牧草地の中の道だったし、石垣島で見た場所も農業試験場の中だった。実際に家畜の飼料として栽培されている国もある。

おもしろいのは藍染の原料として利用されたこともあったというので、そんな用途のために種子を輸入した可能性もある。1メートルほどに立ち上がることもあるようだが、日本に帰化しているものは、ほとんど地面に倒伏して、横に這うように延びているものがほとんどである。

 

 

タヌキコマツナギという和名もあるようなのだが、この名が一般的なのかどうか、何しろ図鑑類に出てくることがないので、ここでは保留しておく。和名の由来は種子に金色の毛が生えていて、それを狸に例えたのだとか。鞘は画像の一部に写っているが、鈴なりと言った感じにつくので、種子生産はかなりのものと思う。あいにくとまだ若い果実だったので、種子の毛までは確認できなかった。コマツナギ属なので花はなかなか美しい。

 

 

2023年10月22日 沖縄県西表島で撮影

 

永田芳男(ながた・よしお)

1947年生まれ。植物写真家。おもな著書に『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』『増補改訂新版 絶滅危惧植物図鑑レッドデータプランツ』(いずれも山と溪谷社)など多数。


★図鑑.jpの掲載図鑑に Indigofera hirsutaタヌキコマツナギ)は掲載されていません。

タヌキコマツナギ(マメ科)Indigofera hirsuta

 

 

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