オオイチゴツナギだと思うのですが…
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推察される和名 | スズメノカタビラ |
自信度 | ★★☆ |
撮影場所 | 埼玉県 / 所沢市の路傍。住宅地のコンクリートの隙間。 |
撮影日時 | 2018-03-12 |
全体の形(花序はスズメノカタビラの様で枝は垂れない)、葉舌の形(お坊ちゃま君の頭みたいな)、葉がぼてっと短く完全なボート型であることや生育環境が人里(というか住宅地)という辺りから、オオイチゴツナギだと思います。葯は0.8mm程度でした。
ただ、花序の枝の小刺針というのが良く確認できなかったので、確認させていただきたく、投稿させていただきます。
花序の枝に白いイボイボみたいなものはあるのですが(手触りもつるつるでざらつかない)、個体差であったり、未発達、既に落ちてしまった等の理由で、針状ではなくイボ状態なのでしょうか?
何か見解がありましたら、お願いいたします。
ただ、花序の枝の小刺針というのが良く確認できなかったので、確認させていただきたく、投稿させていただきます。
花序の枝に白いイボイボみたいなものはあるのですが(手触りもつるつるでざらつかない)、個体差であったり、未発達、既に落ちてしまった等の理由で、針状ではなくイボ状態なのでしょうか?
何か見解がありましたら、お願いいたします。
yamasyoku
投稿日 | 2018年03月12日 |
最終更新日 | 2019年03月05日 |
閲覧数 | 6,403 Views |
専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林健人先生(長池公園副園長)からの回答が届きましたので投稿します(事務局)
******
種名:スズメノカタビラ(亜種アオスズメノカタビラ)
確からしさ:★★☆
識別ポイント:生育時期、生育環境、大きさ、各部位の形態
参考図鑑:イネ科ハンドブック、日本イネ科植物図譜、兵庫県イネ科植物誌、千葉県の自然誌別編4:千葉県植物誌ほか
**
お写真の植物、イネ科イチゴツナギ属(以下Poa)で間違いありませんが、種としましては、スズメノカタビラ(全体緑色で葯0.7mm以上=亜種アオスズメノカタビラ)の可能性が高いと考えられます。
(※以下、総称スズメノカタビラを使用)
フィールド(東京八王子界隈)での観察経験と各種文献に基づき、以下に私の見解を書かせていただきます。
解説が煩雑になるのを防ぐため、主にオオイチゴツナギとの相違を主眼としてコメント致します。
1.出穂期
通常、Poaの中で、3月初旬から穂が出て開花する種はスズメノカタビラが大半です。
次いで4月にミゾイチゴツナギ、5~6月にかけて順次その他の種が出穂します。オオイチゴツナギは、一般的なPoaの中では特に出穂が遅い傾向にあります。もちろん、例外はあります。
2.生育環境
必ずしも明確ではありませんが、Poaは種によってある程度、好む環境が異なります。
オオイチゴツナギは水田の畦や側溝、路傍、畑の縁など、やや日陰の湿っぽい場所を好む傾向があります。
一方、スズメノカタビラは幅広い環境に適応し、アスファルトの隙間などにも生育します。
3.全形
・草丈
スズメノカタビラの平均サイズは10~20cmとPoaの中では最も小型です。
オオイチゴツナギは、カラスノカタビラの異名が表すように、開花期には30cm以上になるものが典型です。
・葉身
スズメノカタビラ、オオイチゴツナギとも葉の先端はボート状となり、先が急にすぼまって尖る特徴があります。
ただし、葉の長さはスズメノカタビラでは10cm以内、オオイチゴツナギでは10~20cmが標準です。
また、オオイチゴツナギは葉幅も概ね5mm以上あり、他種と比べて著しく幅広に見えます。
もう一点、オオイチゴツナギでは、花序のすぐ下に葉が付き、葉が花序よりも高くなるものがしばしば見られます。(いずれも添付写真参照)
・花序の形態
オオイチゴツナギの花序は長さ10cmほどで丸みがあり、上部の枝は特に斜上ぎみに付くため、やや詰まった感じに見えます。
スズメノカタビラの花序枝は水平開出する傾向があります。
また、花序枝のざらつき(小刺針)ですが、スズメノカタビラのみ、花序枝がほぼ平滑であるため、触った時にざらつきません。
4.小穂
小穂のアップ写真、美しく撮影されていて感動しました。
確かに小穂はオオイチゴツナギともよく似ています。
ただ、先端部分が赤くなっている点は、私の知る限り、オオイチゴツナギではあまり表れない形質です。なお、スズメノカタビラの第二苞潁には肩があり、菱形に見えることが特徴とされていますが、イネ科植物図譜に描かれた複数の線画でもわかるように、この点については必ずしもそうではないようで、釈然としません。
小穂の各部位の毛の生え方についても同様です。
結論として、小穂だけでは私には種を特定できない、というのが正直なところです。
5.葉舌(小舌)
葉舌の大きさは、同定の際に重要な手がかりになります。
正確な長さは把握できませんが、幅広ではっきりとした葉舌であることが確認できます。
葉舌長が2mm以下で、葉基部の色が変わっているラインを超えるか超えないかで途切れているのがオオイチゴツナギ、
2~5mmあってそれなりに目立つようであればスズメノカタビラとなります。
以上の手順より、スズメノカタビラではないかと推測した次第です。
特に生育時期や生育環境などの生態的特徴と植物体の小ささが気になったために、少々疑い深くなってしまいました。
長文となり申し訳ありませんが、一案として同定の参考にしていただけましたら幸いです。
イネ科は写真からの判別が難しく、種名を断言するには至りませんでしたが、こうして「あれかな、これかな?」と意見を出し合い、一緒に悩むのも楽しいですよね!
良いきっかけを作っていただき、ありがとうございました。
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種名:スズメノカタビラ(亜種アオスズメノカタビラ)
確からしさ:★★☆
識別ポイント:生育時期、生育環境、大きさ、各部位の形態
参考図鑑:イネ科ハンドブック、日本イネ科植物図譜、兵庫県イネ科植物誌、千葉県の自然誌別編4:千葉県植物誌ほか
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お写真の植物、イネ科イチゴツナギ属(以下Poa)で間違いありませんが、種としましては、スズメノカタビラ(全体緑色で葯0.7mm以上=亜種アオスズメノカタビラ)の可能性が高いと考えられます。
(※以下、総称スズメノカタビラを使用)
フィールド(東京八王子界隈)での観察経験と各種文献に基づき、以下に私の見解を書かせていただきます。
解説が煩雑になるのを防ぐため、主にオオイチゴツナギとの相違を主眼としてコメント致します。
1.出穂期
通常、Poaの中で、3月初旬から穂が出て開花する種はスズメノカタビラが大半です。
次いで4月にミゾイチゴツナギ、5~6月にかけて順次その他の種が出穂します。オオイチゴツナギは、一般的なPoaの中では特に出穂が遅い傾向にあります。もちろん、例外はあります。
2.生育環境
必ずしも明確ではありませんが、Poaは種によってある程度、好む環境が異なります。
オオイチゴツナギは水田の畦や側溝、路傍、畑の縁など、やや日陰の湿っぽい場所を好む傾向があります。
一方、スズメノカタビラは幅広い環境に適応し、アスファルトの隙間などにも生育します。
3.全形
・草丈
スズメノカタビラの平均サイズは10~20cmとPoaの中では最も小型です。
オオイチゴツナギは、カラスノカタビラの異名が表すように、開花期には30cm以上になるものが典型です。
・葉身
スズメノカタビラ、オオイチゴツナギとも葉の先端はボート状となり、先が急にすぼまって尖る特徴があります。
ただし、葉の長さはスズメノカタビラでは10cm以内、オオイチゴツナギでは10~20cmが標準です。
また、オオイチゴツナギは葉幅も概ね5mm以上あり、他種と比べて著しく幅広に見えます。
もう一点、オオイチゴツナギでは、花序のすぐ下に葉が付き、葉が花序よりも高くなるものがしばしば見られます。(いずれも添付写真参照)
・花序の形態
オオイチゴツナギの花序は長さ10cmほどで丸みがあり、上部の枝は特に斜上ぎみに付くため、やや詰まった感じに見えます。
スズメノカタビラの花序枝は水平開出する傾向があります。
また、花序枝のざらつき(小刺針)ですが、スズメノカタビラのみ、花序枝がほぼ平滑であるため、触った時にざらつきません。
4.小穂
小穂のアップ写真、美しく撮影されていて感動しました。
確かに小穂はオオイチゴツナギともよく似ています。
ただ、先端部分が赤くなっている点は、私の知る限り、オオイチゴツナギではあまり表れない形質です。なお、スズメノカタビラの第二苞潁には肩があり、菱形に見えることが特徴とされていますが、イネ科植物図譜に描かれた複数の線画でもわかるように、この点については必ずしもそうではないようで、釈然としません。
小穂の各部位の毛の生え方についても同様です。
結論として、小穂だけでは私には種を特定できない、というのが正直なところです。
5.葉舌(小舌)
葉舌の大きさは、同定の際に重要な手がかりになります。
正確な長さは把握できませんが、幅広ではっきりとした葉舌であることが確認できます。
葉舌長が2mm以下で、葉基部の色が変わっているラインを超えるか超えないかで途切れているのがオオイチゴツナギ、
2~5mmあってそれなりに目立つようであればスズメノカタビラとなります。
以上の手順より、スズメノカタビラではないかと推測した次第です。
特に生育時期や生育環境などの生態的特徴と植物体の小ささが気になったために、少々疑い深くなってしまいました。
長文となり申し訳ありませんが、一案として同定の参考にしていただけましたら幸いです。
イネ科は写真からの判別が難しく、種名を断言するには至りませんでしたが、こうして「あれかな、これかな?」と意見を出し合い、一緒に悩むのも楽しいですよね!
良いきっかけを作っていただき、ありがとうございました。
回答日2018年03月18日
yamasyoku
なるほど!生育状態の良いスズメノカタビラですね!
私の中では踏圧を受けた10cm前後のスズメノカタビラがスタンダードで、初めからスズメノカタビラを外して考えてしまっていました…
小林先生のコメントに「意見を出し合い、一緒に悩むのも楽しい」とありますが、この様な思い込みを正すという意味でも、重要なことですね。
また、オオイチゴツナギも、写真を添付していただいたので、イメージは分かりました。おそらく、見たことはあるけど、見逃しているのでしょう…
ありがとうございました!
私の中では踏圧を受けた10cm前後のスズメノカタビラがスタンダードで、初めからスズメノカタビラを外して考えてしまっていました…
小林先生のコメントに「意見を出し合い、一緒に悩むのも楽しい」とありますが、この様な思い込みを正すという意味でも、重要なことですね。
また、オオイチゴツナギも、写真を添付していただいたので、イメージは分かりました。おそらく、見たことはあるけど、見逃しているのでしょう…
ありがとうございました!
回答日2018年03月19日
回答
suzuki
2枚目の写真は「小穂とその柄」の写真ですね。「花序の枝に小刺針がある」と言う場合、◯をつけた部分を触るとザラザラが確認できることが多いです。
回答日2018年03月12日
yamasyoku
図入りの解説ありがとうございます!!
教えていただいた「花序の枝」も見てみましたが、小穂の柄と同じ様なイボ状のもので、手触りでは分からない程度のものでした。
もっとイチゴツナギレベルのざらつきをイメージしていたのですが、これがそうなのかも知れません。
その他、内穎・護穎の毛の状況や小穂の形等、基本的にはオオイチゴツナギでした。
イネ科図譜の図では明らかな刺状だったので、もしかしたら個体差かも知れません。近所に生育していたので、後日もう少し見てみます!
教えていただいた「花序の枝」も見てみましたが、小穂の柄と同じ様なイボ状のもので、手触りでは分からない程度のものでした。
もっとイチゴツナギレベルのざらつきをイメージしていたのですが、これがそうなのかも知れません。
その他、内穎・護穎の毛の状況や小穂の形等、基本的にはオオイチゴツナギでした。
イネ科図譜の図では明らかな刺状だったので、もしかしたら個体差かも知れません。近所に生育していたので、後日もう少し見てみます!
回答日2018年03月13日