専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林先生(長池公園副園長)より回答がありましたので掲載します
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種名
ホウチャクソウ
確からしさ
★★☆
識別ポイント
花と葉の形態、付き方、生育環境
参考図鑑
野に咲く花ほか
コメント
この植物の正体は、色素体突然変異を起こしたホウチャクソウと思われます。
第一印象でホウチャクソウを予想されたとのことですが、素晴らしい直感力ですね。
私はこの写真を見てすぐは、何者なのか全くわかりませんでした。
まず、種がホウチャクソウであることについては、かろうじて原型を留めている茎下方に互生する葉の形態と、茎が分枝していること、および花の様子から判断しました。
また、ホウチャクソウではごく稀に全体が白くなるアルビノ個体の観察事例が報告されており、このことも手がかりとなりました。
ただし、写真の個体群は単純にアルビノとして片付けられない点があります。
それは、花の咲き方が通常よりも斜め上向きであり、茎の分枝や葉の付き方も通常の個体とはやや異なって見えることです。
アルビノは色素体ゲノムの異常によって発現する色変わりのため、光合成ができず枯れやすいことはあっても、植物体の色以外の形質は通常とほとんど変わりません。
写真の個体群は色だけでなく、生育型、すなわち形態形成にも異常が見られるわけですが、この疑問に対する解釈として、ひょっとするとヒントになるかもしれない一節を見つけました。
日本光合成学会のwebサイトより、その一部を引用します。
---------以下転載---------
(色素体突然変異は、)色素体の分化や形態形成に異常を生じる遺伝的変異の総称で、変異を起こした遺伝子座は色素体ゲノムに限らない。色素体は、色素体ゲノムの100~150種の遺伝子の産物と、核の数千種の遺伝子の産物によって形成され、さらにミトコンドリアを含めたオルガネラ間相互作用の影響下にあるので、それらの遺伝子の中のいずれかが損なわれると色素体突然変異が生じると考えられる。(中略)色素体変異のうち、アミロプラストの形成不全をひき起こすものでは、重力応答に異常が生じ、植物個体の形態形成にも影響を与える。
---------------------------
日本光合成学会webサイト(色素体突然変異)
https://bit.ly/2IyJtBv
なお、ホウチャクソウには染色体数の異なる二つのタイプが存在します。
花柱が花冠から飛び出し、全体小型で陽地に生える二倍体と、花柱が花冠内部におさまり、全体大型で日陰に生える三倍体です。
写真の個体群は、花の様子から、おそらく後者(三倍体)であると思われます。
少々長くなりましたが、以上より、「何らかの色素体突然変異によって色や形態形成に異常が見られる三倍体型のホウチャクソウ」と推察させていただきます。
* * *
図鑑jpホウチャクソウの掲載ページ一覧
https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=2548
『神奈川県植物誌2001』には「形は変化が多く、幅の広いものから狭いものまでありまた変異が多い」とあります(事務局)
回答日2018年05月12日
aw
小林先生
ご回答頂き、有り難うございます。
これはホウチャクソウのアルビノ個体(群)であろうという事で、驚いています。
アルビノの個体が群として存続できるという点が興味深いです。この個体(群)は辛うじて葉の葉緑素が抜けていないため、種子を作り花や茎が白く葉の付き方が本来と異なるという全体的な形態含めて次世代に引き継がれているのでしょうか。
また、染色体数の異なる2つのタイプが存在するというのも興味深いです。
この点にも気を付けて観察をしてみたいと思います。
ご回答頂き、有り難うございます。
これはホウチャクソウのアルビノ個体(群)であろうという事で、驚いています。
アルビノの個体が群として存続できるという点が興味深いです。この個体(群)は辛うじて葉の葉緑素が抜けていないため、種子を作り花や茎が白く葉の付き方が本来と異なるという全体的な形態含めて次世代に引き継がれているのでしょうか。
また、染色体数の異なる2つのタイプが存在するというのも興味深いです。
この点にも気を付けて観察をしてみたいと思います。
回答日2018年05月12日
回答