専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林先生(長池公園副園長)から回答がありましたので掲載します
***
種名
ノガリヤス
確からしさ
★★★
識別ポイント
生育分布、生育環境、撮影時期、全形、小穂と小花の形態
参考図鑑
野に咲く花、イネ科ハンドブック(文一総合出版)ほか
コメント
この掲示板では久しぶりとなるイネ科投稿、ありがとうございます。
ご投稿いただいた写真は、同定に必要な情報が十分に詰め込まれており、とても助かります。
結論から申しますと、写真の植物はイネ科ノガリヤスです。
イネ科というと、花が目立たない上にどれも似たような姿形をしており、加えて種類が多いことから、とにかく敬遠されがちですね。
確かに、目が慣れるためには相当な気合いと時間が必要なのですが、ある程度コツを掴めば何となく当たりがつくようになります。
はじめから絵合わせをするには種数が多すぎますし、かといって、いきなりルーペで花の構造や葉の形態などを詳しく見ようとしても、すぐに専門用語の壁や思い込みという落とし穴にはまりやすく、何よりも疲れます。
そこで、私がイネ科植物を見分ける際は、消去法で、いくつか可能性のある種に絞り込んだあと、それら候補種一つ一つの特徴を照合していき、最終的な判断を行っています。
消去法と申しましたが、マクロな視点からチェックしていき、徐々に詳しく見ていって、必要があればルーペを使ってミクロな特徴を最終確認する、という手順になります。
具体的には、まず、生えている地域(分布)や環境、発見した時期などの条件の整理から始めます。
今回のケースでは、撮影地は東京都内の平地で、写真の雰囲気と、場所が自然教育園ということから、樹林地の中、あるいは林縁に生育していたと推測できます。また、撮影日が10月なので、秋頃に生育が見られるということになります。
実を言うと、ここまでのくだりで、該当する植物はノガリヤスにほぼ絞られてしまいます。
言い換えれば、写真を見なくても、上記の条件と、コメントにある「背が自分よりも高い」というヒントを拝見しただけでも検討が付いてしまうのです。
ただし、それではあまりにも乱暴なので、写真を参考に、形態的な特徴をもう少し詳しく見ていきましょう。
写真の植物は、ススキのように、数本がまとまって株を作っています。
(※画面手前に写り込んでいる葉は別物=ススキそのものなのでご注意下さい。)
すっと伸びた茎の先には細かく枝分かれした穂(円錐花序)があり、穂の部分は遠目に白っぽく見えます。
さらにクローズアップした写真を見ると、一つの小穂に一つの小花が付き、小花からは芒と呼ばれる毛のようなものが一本飛び出しているのが見受けられます。
ここまでくれば、先の予想通り、全てのポイントがノガリヤスの特徴と一致しているはずです。
ここで一度、特徴を整理をしておきます。
・秋に見られる。
・樹林内や林縁に生える。
・関東地方の平地~丘陵地に生える。
・草丈は大きく背丈ほどになる。
・数本がまとまり、株を作って生える。(束生)
・穂(円錐花序)が白っぽく見える。
・1つの小穂につき1つの小花が付く。
・小花には芒(1本飛び出した長い毛のようなもの)がある。(※類似種ヤマアワとの区別点)
以上のように、マクロからミクロへ視点を移しながら、絞り込みと確認を行っていく方法は、イネ科だけでなく、シダ植物やカヤツリグサ科でも有効な場合が多く、大変おすすめです。
地味な植物こそ、その見た目だけではなく、生態特性や環境嗜好など、広い視点を大事にしてみると、案外とっつきやすくなることと思います。
ぜひこれからは、一般的には難しいと言われるイネ科植物の識別にもトライしてみて下さい!
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種名
ノガリヤス
確からしさ
★★★
識別ポイント
生育分布、生育環境、撮影時期、全形、小穂と小花の形態
参考図鑑
野に咲く花、イネ科ハンドブック(文一総合出版)ほか
コメント
この掲示板では久しぶりとなるイネ科投稿、ありがとうございます。
ご投稿いただいた写真は、同定に必要な情報が十分に詰め込まれており、とても助かります。
結論から申しますと、写真の植物はイネ科ノガリヤスです。
イネ科というと、花が目立たない上にどれも似たような姿形をしており、加えて種類が多いことから、とにかく敬遠されがちですね。
確かに、目が慣れるためには相当な気合いと時間が必要なのですが、ある程度コツを掴めば何となく当たりがつくようになります。
はじめから絵合わせをするには種数が多すぎますし、かといって、いきなりルーペで花の構造や葉の形態などを詳しく見ようとしても、すぐに専門用語の壁や思い込みという落とし穴にはまりやすく、何よりも疲れます。
そこで、私がイネ科植物を見分ける際は、消去法で、いくつか可能性のある種に絞り込んだあと、それら候補種一つ一つの特徴を照合していき、最終的な判断を行っています。
消去法と申しましたが、マクロな視点からチェックしていき、徐々に詳しく見ていって、必要があればルーペを使ってミクロな特徴を最終確認する、という手順になります。
具体的には、まず、生えている地域(分布)や環境、発見した時期などの条件の整理から始めます。
今回のケースでは、撮影地は東京都内の平地で、写真の雰囲気と、場所が自然教育園ということから、樹林地の中、あるいは林縁に生育していたと推測できます。また、撮影日が10月なので、秋頃に生育が見られるということになります。
実を言うと、ここまでのくだりで、該当する植物はノガリヤスにほぼ絞られてしまいます。
言い換えれば、写真を見なくても、上記の条件と、コメントにある「背が自分よりも高い」というヒントを拝見しただけでも検討が付いてしまうのです。
ただし、それではあまりにも乱暴なので、写真を参考に、形態的な特徴をもう少し詳しく見ていきましょう。
写真の植物は、ススキのように、数本がまとまって株を作っています。
(※画面手前に写り込んでいる葉は別物=ススキそのものなのでご注意下さい。)
すっと伸びた茎の先には細かく枝分かれした穂(円錐花序)があり、穂の部分は遠目に白っぽく見えます。
さらにクローズアップした写真を見ると、一つの小穂に一つの小花が付き、小花からは芒と呼ばれる毛のようなものが一本飛び出しているのが見受けられます。
ここまでくれば、先の予想通り、全てのポイントがノガリヤスの特徴と一致しているはずです。
ここで一度、特徴を整理をしておきます。
・秋に見られる。
・樹林内や林縁に生える。
・関東地方の平地~丘陵地に生える。
・草丈は大きく背丈ほどになる。
・数本がまとまり、株を作って生える。(束生)
・穂(円錐花序)が白っぽく見える。
・1つの小穂につき1つの小花が付く。
・小花には芒(1本飛び出した長い毛のようなもの)がある。(※類似種ヤマアワとの区別点)
以上のように、マクロからミクロへ視点を移しながら、絞り込みと確認を行っていく方法は、イネ科だけでなく、シダ植物やカヤツリグサ科でも有効な場合が多く、大変おすすめです。
地味な植物こそ、その見た目だけではなく、生態特性や環境嗜好など、広い視点を大事にしてみると、案外とっつきやすくなることと思います。
ぜひこれからは、一般的には難しいと言われるイネ科植物の識別にもトライしてみて下さい!
回答日2018年07月27日
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