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春のシギチ祭り

クチバシが反っている理由が判明? シギチの疑問~生態編

2018-05-23

遠い距離を旅してきて、食べたり休んだりする様子をゆっくり見せてくれるシギ・チドリ。
そんなシギ・チドリを見ていて感じる素朴な疑問について、バードリサーチ守屋さんに回答いただきました。


採餌について

Q.
シギ・チドリは採餌の様子がよく観察できますよね。食べるものの傾向はどれくらい厳密に決まっているんですか?

A.​
シギチドリ類は多様な生き物をエサとしています。
好みはありますが、実際はその場に合わせて最も取りやすいエサを捕っているように見えます。
例えば日本では、コオバシギは「貝類が好き」というイメージですが、アメリカのデラウェア湾では産卵期にあるカブトガニの卵を食べるそうです。
種として同じでも亜種が違う場合も、食べるものが違ったりするようです。


Q.カニや貝など固いものを食べても大丈夫なんですか?

A.​
シギ類は、食べ物を丸呑みして砂嚢(さのう:筋胃)ですりつぶすという消化方法なので問題ありません。基本的に丸呑みして大丈夫です。
ですが、ミヤコドリは貝をこじ開けて中身を綺麗に取り出して食べる様子を観察できます。 


Q.長いクチバシの形状は、干潟で深い場所の生き物を食べるためと聞きましたが、『原色日本野鳥生態図鑑』でチュウシャクシギのページを見ると「巣はツンドラの渇いた地上にくぼみをつくり」と書いてあり、「ツンドラの渇いた地上」でも長いクチバシは役に立つのだろうか、と不思議になりました。繁殖地でも干潟的な場所で餌を採っているのでしょうか?

​A.干潟のような多種が集まる場所でエサを分け合った結果、それぞれが多彩なクチバシの形を持つようになったと説明されています。繁殖地では昆虫類が主なエサになっており、深く探る必要はないでしょうが、つまんだり拾い上げたりに不便はないと思います。

ソリハシシギ
ソリハシシギの反ったクチバシ



家族関係

Q.メダイチドリやシロチドリが、2・3羽前後の小さな群れで見かけるのですが、家族関係なのですか?

A.​繁殖前後では家族かもしれませんが、常に家族とは限りません。


Q.繁殖地ではない場所(渡りの最中や中継地)でも、夫婦は一緒に行動しているのですか?

​A.シギ類の配偶システムはいろいろで、一夫一妻、一夫多妻、多夫一妻など繁殖の状況などによっても変わり、雌雄によって繁殖地や子育てから離れる時期がちがいます。

多くの場合別に行動していると考えられていて、オグロシギは越冬地では別々に過ごし、同時期に繁殖地戻ってきて同じ相手と繁殖します。ただ同じタイミングで戻ってこないと別れるようです。

キョウギョシギつがい
キョウギョシギつがい?(わたべ えいじさんの投稿


渡りについて

Q.中継地である日本で見かける時は、常に食べ物を食べているので、渡りで飛んでいる間、まったく食べずに飛び続けるというのが不思議です。

A.
渡りで飛んでいる時と、中継地で補給している時で、シギ・チドリは体型を変えているのです。
渡りの前になると、消化器官は小さくなり、羽ばたくための胸筋が発達して、脂肪を蓄えた体型になります。
とはいえ、​​小型のシギ類の幼鳥など中継地についた直後は本当にヘロヘロです。
#バンディングで渡来直後の鳥を捕まえると脂肪がスカスカ(ペラペラ?)だそうです


Q.水田にくるものもいますよね。日本で水田が減っていることは、シギ・チドリの減少に影響はあるのでしょうか?

A.
淡水の環境を好む種類もいます。
かつては中継地の湿地がなくなっても別の湿地へ行くと思われていましたが、そこまで柔軟ではないと考えられます。大きく個体数が減少していることを考えると、アテにしていた中継地の湿地の減少は影響があると考えられます。
2010
年、水田をよく利用している種と黄海(渤海)を中継地としてよく利用する種に減少傾向が見られるという論文が出ています。

Amano, T., Szekely, T., Koyama, K., Amano, H., Sutherland, W. J., 2010. A framework for monitoring the status of populations: An example from wader populations in the East Asian-Australasian flyway. Biological Conservation, 143 (9), pp. 2238-2247.


Q.多くのシギ・チドリ類は旅鳥として日本を通過するだけだと思いますが、他の鳥(猛禽類など)に比べて、日本にいる期間が長い気がします。移動する距離が長いからゆっくり休息するのでしょうか?

A.​一度に長い距離を移動したり、一旦中継地で集合してから渡ったり、中継地で換羽を終了させてから渡ったりと種によって目的地までにかかる時間はさまざまです。ムナグロは繁殖地に向かう春に日本の耕地にしばらく滞在することが知られています。中継地で栄養補給がゆっくり必要な種もいるでしょうね。 



その他

Q.
シギ・チドリは基本的に泳がないということでよいでしょうか?

​A.ヒレアシシギ類のほかは、基本的には泳ぎませんが泳いだり潜ったり出来ます。

ハイイロヒレアシシギ
ハイイロヒレアシシギ(えむさんの投稿


 

このあとは調査編に続きます!

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