専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林先生(長池公園副園長)からコメントがありましたので、掲載します(事務局)
***
種名
イヌトウバナ
確からしさ
★★☆
識別ポイント
生育環境、分布、花序のつく位置、萼筒と葉の形態
参考図鑑
山に咲く花、神奈川県植物誌2001ほか
コメント
この植物は、ご推察のとおりイヌトウバナと思われます。
トウバナの仲間であることを前提に、見分けのポイントをコメントさせていただきます。
山梨県の山地で見られる可能性があるトウバナの仲間は、次の5種類です。
ヤマトウバナ、ヒロハヤマトウバナ、イヌトウバナ、ミヤマトウバナ、トウバナ
これらのうち、まずは全国でもっとも身近に見られる「トウバナ」をしっかりと認識することが大切です。
トウバナの主な特徴を以下に挙げます。
①平地~低山地に多い、②春から夏にかけて開花する、③背丈が低い、④萼は本属でもっとも小型、⑤葉は丸みを帯び、鋸歯が浅い。
ご質問の植物は、①~⑤までの特徴とは一見して異なるため、トウバナ以外の4種に絞ることができます。
さて、トウバナ以外の4種はいずれも山地性の種類で、迷いやすいものです。
この段階で、多くの検索表では、萼や花の大きさ(長さ)が手がかりとして登場します。
とはいえ、写真から細かいスケールまで推測することはできません。
また、この仲間は葉裏の腺点の多少も重要な識別形質なのですが、これも表面からでは確認できません。
そこで、写真からでも確認できるポイント、a.花序(花を付ける枝)のつく位置、b.萼筒の毛、c.葉の形態、の三点から絞り込んでみます。
a.花序のつく位置
ヤマトウバナとヒロハヤマトウバナは、茎の頂部に一つのみか、あるいは頂部+その一段下の葉腋(対生する葉の付け根)までの二つ、
花序がつきます。それより下の葉腋には花序を付けないということです。写真の個体は、よく見ると上から三段目の葉腋からも花序を出しています。
上から三段目以下にも花序がつくのは、イヌトウバナ、ミヤマトウバナの特徴です。
b.萼筒の毛
写真の個体の花の部分を拡大してみますと、萼筒に白くて長い毛がたくさん生えているように見えます。
図鑑などで「萼筒脈上に白長軟毛が多い」などと書かれているのは、この遠目からでも目立つ白い毛のことです。
このような毛を持っているのは、ヒロハヤマトウバナ、イヌトウバナの特徴です。
c.葉の形態
ヤマトウバナの葉は茎の上部ほど大きくなる特徴があります。
ヒロハヤマトウバナは茎の中部以上の葉はほぼ同じ大きさとなります。
イヌトウバナ、ミヤマトウバナは分枝したところから上の葉が茎下部の葉より小さくなります。
写真のように、茎の下から上に向かって葉が小さくなるのは、イヌトウバナ、ミヤマトウバナの特徴です。
これらより、a~cのいずれの特徴にも合致する「イヌトウバナ」である可能性がもっとも高いでしょう。
ただし、白長軟毛があるように見える萼筒も、もう少しはっきりと様子を確認できないことには、
ミヤマトウバナではないと言いきれませんし、神奈川県植物誌2001には、
丹沢山地で見られるイヌトウバナはヒロハヤマトウバナと酷似し、花冠サイズ等による区別が
必要と記述のあるとおり、同種とされている中にも大小の変異が見られるようですので、
種の特定となると、やはりもっと詳しく調べる必要がありそうです。
以上、参考としていただけましたら幸いです。
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種名
イヌトウバナ
確からしさ
★★☆
識別ポイント
生育環境、分布、花序のつく位置、萼筒と葉の形態
参考図鑑
山に咲く花、神奈川県植物誌2001ほか
コメント
この植物は、ご推察のとおりイヌトウバナと思われます。
トウバナの仲間であることを前提に、見分けのポイントをコメントさせていただきます。
山梨県の山地で見られる可能性があるトウバナの仲間は、次の5種類です。
ヤマトウバナ、ヒロハヤマトウバナ、イヌトウバナ、ミヤマトウバナ、トウバナ
これらのうち、まずは全国でもっとも身近に見られる「トウバナ」をしっかりと認識することが大切です。
トウバナの主な特徴を以下に挙げます。
①平地~低山地に多い、②春から夏にかけて開花する、③背丈が低い、④萼は本属でもっとも小型、⑤葉は丸みを帯び、鋸歯が浅い。
ご質問の植物は、①~⑤までの特徴とは一見して異なるため、トウバナ以外の4種に絞ることができます。
さて、トウバナ以外の4種はいずれも山地性の種類で、迷いやすいものです。
この段階で、多くの検索表では、萼や花の大きさ(長さ)が手がかりとして登場します。
とはいえ、写真から細かいスケールまで推測することはできません。
また、この仲間は葉裏の腺点の多少も重要な識別形質なのですが、これも表面からでは確認できません。
そこで、写真からでも確認できるポイント、a.花序(花を付ける枝)のつく位置、b.萼筒の毛、c.葉の形態、の三点から絞り込んでみます。
a.花序のつく位置
ヤマトウバナとヒロハヤマトウバナは、茎の頂部に一つのみか、あるいは頂部+その一段下の葉腋(対生する葉の付け根)までの二つ、
花序がつきます。それより下の葉腋には花序を付けないということです。写真の個体は、よく見ると上から三段目の葉腋からも花序を出しています。
上から三段目以下にも花序がつくのは、イヌトウバナ、ミヤマトウバナの特徴です。
b.萼筒の毛
写真の個体の花の部分を拡大してみますと、萼筒に白くて長い毛がたくさん生えているように見えます。
図鑑などで「萼筒脈上に白長軟毛が多い」などと書かれているのは、この遠目からでも目立つ白い毛のことです。
このような毛を持っているのは、ヒロハヤマトウバナ、イヌトウバナの特徴です。
c.葉の形態
ヤマトウバナの葉は茎の上部ほど大きくなる特徴があります。
ヒロハヤマトウバナは茎の中部以上の葉はほぼ同じ大きさとなります。
イヌトウバナ、ミヤマトウバナは分枝したところから上の葉が茎下部の葉より小さくなります。
写真のように、茎の下から上に向かって葉が小さくなるのは、イヌトウバナ、ミヤマトウバナの特徴です。
これらより、a~cのいずれの特徴にも合致する「イヌトウバナ」である可能性がもっとも高いでしょう。
ただし、白長軟毛があるように見える萼筒も、もう少しはっきりと様子を確認できないことには、
ミヤマトウバナではないと言いきれませんし、神奈川県植物誌2001には、
丹沢山地で見られるイヌトウバナはヒロハヤマトウバナと酷似し、花冠サイズ等による区別が
必要と記述のあるとおり、同種とされている中にも大小の変異が見られるようですので、
種の特定となると、やはりもっと詳しく調べる必要がありそうです。
以上、参考としていただけましたら幸いです。
回答日2018年10月09日
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