専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林先生(長池公園副園長)から回答がありましたので、掲載します
****
種名
エゾスカシユリ
確からしさ
★★☆
識別ポイント
蕾の形態、生育分布
参考図鑑
日本の浜辺を歩く(インツール・システム)、日本のユリ(誠文堂新光社)ほか
コメント
suzukiさまが既に仰っているように、スカシユリとエゾスカシユリは亜種あるいは変種の関係とされており、両者は非常に近縁です。
ご存じの通り、エゾスカシユリは北海道を南限として北半球に広く分布するもので、本州で見られるスカシユリとは、いくつかの形態の違いから区別ができるとされています。
両者の間には、自然の状態では一応、海を隔てた地理的な隔離が働いています。
しかしながら、スカシユリの仲間は姿が美しく、また地下の塊茎が食用としても好まれるため、人為的な移入(自生地以外での生育)やそれに伴う交雑の可能性も考慮しなくてはなりません。
※「日本のユリ(誠文堂新光社)」には、“青森県大間崎の弁天島付近に自生する外ヶ浜スカシユリは、エゾスカシユリが野生化してイワトユリ(スカシユリ)と自然交雑したものと思われます。”との記述もありました。
このことを前提とした上で、複数の文献から、2種の形態的特徴をまとめてみました。
なお、今回は、2種を区別するポイント(分類形質)と、区別のために用いるべきでない特徴(参考)とを、それぞれ明確にしつつ整理してみたいと思います。
①蕾と花柄(分類形質)
エゾスカシユリ→蕾と花柄に白い綿毛を密生。
スカシユリ→蕾と花柄にはわずかに粗毛が生える。
②茎下部(分類形質)
エゾスカシユリ→茎下部には乳状の突起が全く無いかごく少ない。
スカシユリ→茎下部には乳状の突起が多数ある。
③地下茎(分類形質)
エゾスカシユリ→卵形の鱗茎があり、地下茎は横に這うことが多い。鱗片にくびれがある。
スカシユリ→卵形の鱗茎があり、地下茎はあまり這わない。
④花(参考)
エゾスカシユリ→茶碗形の花を3~8個付ける。ただし花の数、色、形、大きさには変異がある。
スカシユリ→盃形の花を1~3個付ける。ただし花の数、色、形、大きさには変異がある。
⑤葉(参考)
エゾスカシユリ→広線形~狭披針形の葉を茎に密生。
スカシユリ→線形~長楕円形の葉を茎に密生。
⑥草丈(参考)
エゾスカシユリ→60~100cmと高い。
スカシユリ→20~80cm程度が普通。
以上が主なところだと思います。
写真からは、純血のスカシユリでは見られない特徴とされる「白い綿毛が密生する蕾と花柄」がはっきりと確認できます。
故にエゾスカシユリの可能性が極めて高いと思われますが、②と③のポイントも併せてチェックしてみて下さい。
さらに、④から⑥までに挙げた両者の傾向性とも、照らし合わせてみると良いでしょう。
これらの形質は、写真の個体がエゾスカシユリの典型的な特徴を有しているかどうか、すなわち、雑種などの可能性はないか、という判断材料になるかもしれないからです。
以上、長くなりましたが、参考にしていただけましたら幸いです。
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種名
エゾスカシユリ
確からしさ
★★☆
識別ポイント
蕾の形態、生育分布
参考図鑑
日本の浜辺を歩く(インツール・システム)、日本のユリ(誠文堂新光社)ほか
コメント
suzukiさまが既に仰っているように、スカシユリとエゾスカシユリは亜種あるいは変種の関係とされており、両者は非常に近縁です。
ご存じの通り、エゾスカシユリは北海道を南限として北半球に広く分布するもので、本州で見られるスカシユリとは、いくつかの形態の違いから区別ができるとされています。
両者の間には、自然の状態では一応、海を隔てた地理的な隔離が働いています。
しかしながら、スカシユリの仲間は姿が美しく、また地下の塊茎が食用としても好まれるため、人為的な移入(自生地以外での生育)やそれに伴う交雑の可能性も考慮しなくてはなりません。
※「日本のユリ(誠文堂新光社)」には、“青森県大間崎の弁天島付近に自生する外ヶ浜スカシユリは、エゾスカシユリが野生化してイワトユリ(スカシユリ)と自然交雑したものと思われます。”との記述もありました。
このことを前提とした上で、複数の文献から、2種の形態的特徴をまとめてみました。
なお、今回は、2種を区別するポイント(分類形質)と、区別のために用いるべきでない特徴(参考)とを、それぞれ明確にしつつ整理してみたいと思います。
①蕾と花柄(分類形質)
エゾスカシユリ→蕾と花柄に白い綿毛を密生。
スカシユリ→蕾と花柄にはわずかに粗毛が生える。
②茎下部(分類形質)
エゾスカシユリ→茎下部には乳状の突起が全く無いかごく少ない。
スカシユリ→茎下部には乳状の突起が多数ある。
③地下茎(分類形質)
エゾスカシユリ→卵形の鱗茎があり、地下茎は横に這うことが多い。鱗片にくびれがある。
スカシユリ→卵形の鱗茎があり、地下茎はあまり這わない。
④花(参考)
エゾスカシユリ→茶碗形の花を3~8個付ける。ただし花の数、色、形、大きさには変異がある。
スカシユリ→盃形の花を1~3個付ける。ただし花の数、色、形、大きさには変異がある。
⑤葉(参考)
エゾスカシユリ→広線形~狭披針形の葉を茎に密生。
スカシユリ→線形~長楕円形の葉を茎に密生。
⑥草丈(参考)
エゾスカシユリ→60~100cmと高い。
スカシユリ→20~80cm程度が普通。
以上が主なところだと思います。
写真からは、純血のスカシユリでは見られない特徴とされる「白い綿毛が密生する蕾と花柄」がはっきりと確認できます。
故にエゾスカシユリの可能性が極めて高いと思われますが、②と③のポイントも併せてチェックしてみて下さい。
さらに、④から⑥までに挙げた両者の傾向性とも、照らし合わせてみると良いでしょう。
これらの形質は、写真の個体がエゾスカシユリの典型的な特徴を有しているかどうか、すなわち、雑種などの可能性はないか、という判断材料になるかもしれないからです。
以上、長くなりましたが、参考にしていただけましたら幸いです。
回答日2018年06月25日
tanaemi
ご丁寧な解説、ありがとうございます。
10年以上、毎年スカシユリを見る機会がありましたが今回のように綿毛が密生している個体を見たことがありませんでした。
前回、スカシユリは茎が無毛と記載致しましたが、スカシユリは無毛という思い込みと茎丈の低いスカシユリの場合茎上の花が大きく、茎の毛は確認できにくい状況など観察力が低かったと思っています。(蕾、花枝は無毛に近い)
本日、改めてスカシユリの茎の下の方まで確認しました。若干の毛を確認しました。
投稿の個体はまだ開花していませんでしたが、蕾は大きくなり若干色をおびて来ていました。
開花まで見届けたいと思います。
ありがとうございました。
10年以上、毎年スカシユリを見る機会がありましたが今回のように綿毛が密生している個体を見たことがありませんでした。
前回、スカシユリは茎が無毛と記載致しましたが、スカシユリは無毛という思い込みと茎丈の低いスカシユリの場合茎上の花が大きく、茎の毛は確認できにくい状況など観察力が低かったと思っています。(蕾、花枝は無毛に近い)
本日、改めてスカシユリの茎の下の方まで確認しました。若干の毛を確認しました。
投稿の個体はまだ開花していませんでしたが、蕾は大きくなり若干色をおびて来ていました。
開花まで見届けたいと思います。
ありがとうございました。
回答日2018年06月25日
回答
suzuki
とても難しいですね。スカシユリはエゾスカシユリと非常に近縁なようです。変異があって境目がはっきりしなくなることもあるのかもしれませんし、ひょっとしたら、稀には交雑もあるかも。蕾の綿毛の有無だけでどちらか決めるのは無理な状況のように思います。
気になるのは、スカシユリの茎が無毛とお書きになっていることです。普通はスカシユリの茎の下部には剛毛や突起があるようです。無毛というのは、茎ではなく花柄のことでしょうか。
気になるのは、スカシユリの茎が無毛とお書きになっていることです。普通はスカシユリの茎の下部には剛毛や突起があるようです。無毛というのは、茎ではなく花柄のことでしょうか。
回答日2018年06月23日