専門家の回答
小林先生(長池公園)
小林先生(長池公園副園長)からコメントがありましたので掲載します(事務局)
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種名
カラクサイノデ
確からしさ
★★★
識別ポイント
生育分布、生育環境、全形、鱗片の量・色・形
参考図鑑
信州のシダ(ほおずき書籍)、長野県植物誌(信濃毎日新聞社)、北海道のシダ入門図鑑(北海道大学出版会)ほか
コメント
特徴的なシダ植物のご質問、ありがとうございます。
先に結論から申しますと、このシダ植物は、オシダ科イノデ属の「カラクサイノデ」でしょう。
同じような環境でよく見かけるヤマドリゼンマイよりも、全体的に毛羽立っているというか、雰囲気が異なって見えますね。
suzukiさまからのコメントにもございますように、周囲に胞子葉が立ち上がっていない点と、全体の“モシャモシャ具合”から、私もオシダの仲間であることを直感しました。
まず、芽吹きが毛むくじゃらで、特に株の根元近くから葉の上のほうまで鱗片(毛のようなもの)が目立つこと、葉の切れ込み(小羽片)の先端が鋭く尖ること、数本の葉が垂直に立ち上がり大きな株を作ること、などの特徴から、オシダ科のイノデ属というグループであることが予想できます。
シダ植物がお好きな方でも、“イノデ”という言葉を聞くだけで耳を塞ぎたくなるほど、 種類が多くて見分けが難しく、雑種の組み合わせも多様で厄介な分類群として知られています。
同定には、鱗片(毛のようなもの)の形状や葉裏のソーラス(胞子曩の集まり)などを丹念に見ていく必要があり、
遠景写真からの同定となると、通常は困難なのです。
しかし、イノデ属の中にも、見た目だけで判別できる種類もありますので諦めずに見ていきましょう。
撮影地が長野県小谷村の栂池自然園ということで、水平分布・垂直分布・生育環境から大幅に種を絞ることができます。
信州には、暖地性のシダも分布していますが、標高1900mの高層湿原ともなれば、涼しい地域に分布するシダ=北方系のシダに限定され、さらに写真の様子から、生育していた場所は樹林内ではなく、割に開けた環境であることが推測できます。
“長野県に分布するイノデ属で、亜高山帯~高山帯の開けた場所に群生する種”を『信州のシダ』を用いて調べてみますと、カラクサイノデが該当します。
群生する立ち姿や、大型で薄い膜状の鱗片、そしてよく見ると下のほうの羽片は短く縮小しており、外見の特徴も一致していますね。
なお、カラクサイノデとよく似たアズミイノデは、小羽片がはっきりと独立し、より標高の低い樹林内に生育することが多いようです。
最後に念のため、『長野県植物誌』でカラクサイノデの分布を確認しましたところ、小谷村栂池で採集された記録がしっかり記載されていました。
以上より、このシダの正体はカラクサイノデであると推察させていただきます。いかがでしょうか?
追記:確かにタニヘゴも葉の展開時は壮大に立ち上がり、株を作りますが、タニヘゴの葉は濃緑色で切れ込みが浅く、
鱗片は写真のものほど目立ちません。また、羽片が葉柄の下部(根元近く)まで付くことも特徴的です。
(※参考文献にある『北海道のシダ入門図鑑』に掲載されている本種の標本写真は、後に、正しくは「アズミイノデ」の標本であることが判明しておりますので活用される際はご注意下さい。)
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種名
カラクサイノデ
確からしさ
★★★
識別ポイント
生育分布、生育環境、全形、鱗片の量・色・形
参考図鑑
信州のシダ(ほおずき書籍)、長野県植物誌(信濃毎日新聞社)、北海道のシダ入門図鑑(北海道大学出版会)ほか
コメント
特徴的なシダ植物のご質問、ありがとうございます。
先に結論から申しますと、このシダ植物は、オシダ科イノデ属の「カラクサイノデ」でしょう。
同じような環境でよく見かけるヤマドリゼンマイよりも、全体的に毛羽立っているというか、雰囲気が異なって見えますね。
suzukiさまからのコメントにもございますように、周囲に胞子葉が立ち上がっていない点と、全体の“モシャモシャ具合”から、私もオシダの仲間であることを直感しました。
まず、芽吹きが毛むくじゃらで、特に株の根元近くから葉の上のほうまで鱗片(毛のようなもの)が目立つこと、葉の切れ込み(小羽片)の先端が鋭く尖ること、数本の葉が垂直に立ち上がり大きな株を作ること、などの特徴から、オシダ科のイノデ属というグループであることが予想できます。
シダ植物がお好きな方でも、“イノデ”という言葉を聞くだけで耳を塞ぎたくなるほど、 種類が多くて見分けが難しく、雑種の組み合わせも多様で厄介な分類群として知られています。
同定には、鱗片(毛のようなもの)の形状や葉裏のソーラス(胞子曩の集まり)などを丹念に見ていく必要があり、
遠景写真からの同定となると、通常は困難なのです。
しかし、イノデ属の中にも、見た目だけで判別できる種類もありますので諦めずに見ていきましょう。
撮影地が長野県小谷村の栂池自然園ということで、水平分布・垂直分布・生育環境から大幅に種を絞ることができます。
信州には、暖地性のシダも分布していますが、標高1900mの高層湿原ともなれば、涼しい地域に分布するシダ=北方系のシダに限定され、さらに写真の様子から、生育していた場所は樹林内ではなく、割に開けた環境であることが推測できます。
“長野県に分布するイノデ属で、亜高山帯~高山帯の開けた場所に群生する種”を『信州のシダ』を用いて調べてみますと、カラクサイノデが該当します。
群生する立ち姿や、大型で薄い膜状の鱗片、そしてよく見ると下のほうの羽片は短く縮小しており、外見の特徴も一致していますね。
なお、カラクサイノデとよく似たアズミイノデは、小羽片がはっきりと独立し、より標高の低い樹林内に生育することが多いようです。
最後に念のため、『長野県植物誌』でカラクサイノデの分布を確認しましたところ、小谷村栂池で採集された記録がしっかり記載されていました。
以上より、このシダの正体はカラクサイノデであると推察させていただきます。いかがでしょうか?
追記:確かにタニヘゴも葉の展開時は壮大に立ち上がり、株を作りますが、タニヘゴの葉は濃緑色で切れ込みが浅く、
鱗片は写真のものほど目立ちません。また、羽片が葉柄の下部(根元近く)まで付くことも特徴的です。
(※参考文献にある『北海道のシダ入門図鑑』に掲載されている本種の標本写真は、後に、正しくは「アズミイノデ」の標本であることが判明しておりますので活用される際はご注意下さい。)
回答日2018年08月07日
図鑑.jp事務局
「推察される和名」をタニヘゴ→カラクサイノデに変更させていただきます(事務局)
回答日2018年08月07日
回答