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新しいワシタカ類の見方と識別

大型ワシタカ類の換羽を観察して年齢を推定する ➀基本の見方と2年目まで

2018-10-30

先崎啓究=文と写真

  

前回のコラムでは、中型種の換羽や幼鳥の模様について扱いましたが、今回はより大型のワシ類とクマタカの換羽や年齢についてご紹介します。

近年の撮影機材の発展により、観察対象の詳細な撮影が可能となり、詳細な個体の状況を読み取ることができるようになってきました。近くで撮影できた場合などは、翼の欠刻の具合や虹彩色など様々な情報が得られる場合が多いでしょう。その中でも今回特に注目頂きたいのは換羽状況です。

多くの小型種(ハイタカ、ツミなど)や中型種(チュウヒ、サシバ、オオタカなど)、 それに一部の大型種(トビ、ミサゴ)は年一回、体の内側から外側に向かって風切羽を、コンディションが良好な場合すべて換羽させます。これに対して、オオワシ、オジロワシ、クロハゲワシ、イヌワシ、カラフトワシ、カタシロワシ、クマタカなどの大型種の成鳥はすべての風切の換羽を行うのに数年かかります(中型種でもノスリ類は例外)。

その年生まれた幼鳥が換羽をほとんど行わないことに関しては、前回のコラムで触れた通りで、小型~大型種に共通する特徴です(ミサゴは生まれた年に換羽をしたという例がある)。今回は初列風切のパターンと羽色、体色などから若い個体の年齢を推定してみましょう!

 

換羽を読み取る前に…

換羽の説明をする前に、ややこしい用語について少しおさらいしてみましょう。図鑑をめくると、基本的な「成鳥」、「幼鳥」の他に「2年目個体」や「2暦年個体」、さらには「第一回冬羽」など、多数の用語が出てきており、ややこしさに拍車をかけています。

本コラムで扱う成鳥とは羽色を基準にしており、換羽が進行しても、それ以上の模様変化が少なくなる羽色を獲得した段階の個体のことを指します。若いうちから繁殖参加する個体もいるので、今回は繁殖参加個体=成鳥ということではない点にご注意下さい。同時に幼鳥は全身幼羽に包まれている鳥を示します。

 

 

表1 年齢の数え方 (誕生日の設定は任意)

 

今回のコラムでは、上の表中、Aの〇年目という基準で話を進めていこうと思います。また、第〇回冬羽という呼び方は、幼羽から秋に部分換羽して、冬を迎える時期に幼羽と次の世代の羽が混ざる状態(もしくはすべてが新しい羽)の鳥を指します(主にスズメ目の鳥やカモメ類など)。個人的に年1回しか換羽を行わないワシタカ類に、この呼び方は当てはまらないのではないかと考えているので、ここではこの呼び方は使用していません。

 

大型種の基本的な換羽

近年ではハチクマやサシバなどのように発信機による渡りコース判明や、知見の積み重ねによって年齢や種の様々な識別ポイントの解明が進みつつあります。そんな中、個体の換羽や寿命などの生態的な例は、意外な事にまだまだ未解明な部分が多いというのが現状です。まずは眼慣らし(?)に成鳥の新羽と旧羽の色差を覚えてみましょう。

 

 

写真1-1 イヌワシ雄成鳥 10月 中部地方

 

 写真1-2 写真1の拡大写真で風切羽の違いをチェックする

 

換羽を完了したばかりの秋口は、新羽と旧羽を把握するにはうってつけです……。

 

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