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図鑑ナビ

①初心者からの植物図鑑選び指南 【野草編】

2018-06-12

多種多様の図鑑があふれる昨今。一体、どんな図鑑を使えばいいか、初心者ならずとも悩みが多いですよね。特に図鑑jpでは、中上級者向けの図鑑が多いので、初心者にとっては若干使いづらいかもしれません。

では、どんな図鑑を使えばいいのか? 本コラムはそれぞれのジャンルで、初心者の皆さんがどのように図鑑を使ってステップアップしていけばいいのか、識者の方々に具体的に図鑑の特徴を挙げて解説していただきました。

ぜひ、図鑑選びの参考にして下さい。 (図鑑jp事務局)

 

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図鑑は本の形をしていますが、植物の名前や詳細を調べるための「道具」とも言えます。そしてほかの道具がそうであるように、図鑑という道具にも選び方・使い方のコツがあります。たとえば、ビギナーの段階で上級者向けの道具(図鑑)を使ってみても、使いこなすのはなかなか難しいものです。初級者・中級者・上級者、それぞれの段階でもっとも使いやすい図鑑の選び方・使い方を2回に分けてご紹介しましょう。今回は野草図鑑編です。

 

初級者には花の色別構成がおすすめ

はじめはだれでもそうですが、たとえばあなたが植物の名前をほとんど知らないビギナーであると仮定しましょう。ある春の日、あなたは道端で小さな青い花を見つけて、その名前を知りたいと思ったとします。しかし、そこでいきなり中・上級者向けの図鑑を広げてみても、どこにその花が載っているのか見当もつかないはずです。

中・上級者向けの図鑑の多くは「科」ごとに掲載されていて、その植物が何という「科」に属すのかを知らないと調べようがないからです。もちろん五十音順の索引もついていますが、花の名前を知らなければ当然役には立ちません。

そこで初級者向けの図鑑が必要となるわけです。初級者向けの図鑑の多くは、写真で検索できる索引を載せていたり、花色ごと、あるいは花の季節ごとにまとめて掲載していたりして、名前を知らなくても検索できるように作られています。写真索引の「青い花」にざっと目を通すか、あるいは「春」のパートや「青い花」の項を順番にめくってみてください。名前を知りたかった「春に咲く青い花」は、たとえばオオイヌノフグリという植物だと知ることができるでしょう。

初級者向けの図鑑は一覧性に優れていて、特別な知識がなくても直感的に検索できます。また多くはハンディタイプで、持ち歩いて花を見つけたその場で検索できるというメリットもあります(道具としては重さも重要な要素です)。そのような初級者向けの図鑑をいくつか挙げてみましょう。

『増補改訂 フィールドベスト図鑑
日本の野草』

監修/矢野亮 学習研究社

フィールドベスト図鑑日本の野草

春・夏・秋の3巻に分かれていて携帯に便利。花色別に掲載され、さらにページの端に平地・水辺など場所ごとのインデックスがついているので、パラパラとめくって目的の植物を探せる。

『色で見わけ五感で楽しむ野草図鑑』

著/高橋修 監修/藤井伸二
ナツメ社

色で見わける

「花色インデックス」と「果実インデックス」という2種類の写真一覧から検索できる。本文は花色別に掲載され、さらに開花時期順に配列されている。約540種掲載。


『この花なに?がひと目でわかる!
散歩の花図鑑』

著/岩槻秀明 新星出版社

散歩の花図鑑

春「花色もくじ」があり、花色ごとにまとめられた写真一覧から検索できる。本文は季節ごとに分けて掲載。街中で見かける野草・雑草・園芸植物の草花など約500種を収録。

『これだけ知っていれば山歩きが楽しくなる

原寸大 見分ける低山の花100』
著/新井和也 山と溪谷社

季節・花色別に掲載され、ページをめくってすばやく探せる。自生状態と原寸大の花の写真が掲載されているので実物と比べやすい。低山(標高500~1500m)の花を掲載。

 

 

中級者向けは種数も多いので分冊で勝負

ビギナー向けの図鑑は携帯や検索に便利な分、掲載数や情報量が限られているのも事実です。今度はあなたが、ある程度植物に詳しくなったと仮定してみましょう。初級者向けの図鑑を長く使っていて、そこに掲載されている植物の多くも頭に入っています。

ある時あなたは、別の青い花に出合います。オオイヌノフグリの花は長い柄を持つのに対し、この花にはほとんど柄がありません。しかし、切れ込みが入って4枚に分かれる花弁は、オオイヌノフグリのものとよく似ています。この花がオオイヌノフグリの仲間であることは容易に想像できます。

このような想像ができるようになった段階で、あなたはすでに中級者向けの図鑑を使う能力を獲得していることになります。よく見かける代表的な野草の名前と特徴をおぼえ、それを基準にして初めて見た花を、知っている植物の仲間だろうと推測する能力です。

さて、探している植物は初級者向けの図鑑には載っていなかったので*、あなたは中級者向けの図鑑を手にします。仲間だと見当をつけた植物、オオイヌノフグリの掲載ページを開くと、はたしてその前後に探していた花を見つけます。こうして、たとえばタチイヌノフグリという名前を知ることができるわけです。

現時点で入手しやすい中級者向けの図鑑は、フィールド別か植物の種類別のものが多いようです。一冊ですべてをまかなうことはできませんが、その分ハンディで野外に持ち出しやすいというメリットがあります。

中級者向けの図鑑は、新書判からA5判程度の小さな判型ものが主流です。掲載数は100から1000種ほど。100種前後のものは種類別のハンドブックに多く、掲載数が少ないようにも思えます。しかし実際には、日本に自生する全種を網羅するものも多く、それぞれのフィールド・分野を1冊でカバーできるほどの濃い内容になっています。オールカラーの美しい写真図鑑が多く、見ているだけでも楽しめる作りになっているのも特徴です。

*実際にはタイイヌノフグリを掲載する初級者向けの図鑑もあります。

 

◆フィールド別図鑑

いろいろな植物に興味がある人向け。里山歩きや登山に1冊だけ持っていくなら、このタイプの図鑑を選びましょう。

『山溪ハンディ図鑑 野に咲く花
増補改訂新版』

監修/林弥栄 改訂版監修/門田裕一
写真/平野隆久
山と溪谷社

山溪ハンディ図鑑 野に咲く花

図鑑jp掲載あり

『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花
増補改訂新版』

改訂版監修/門田裕一 
編・解説/畔上能力 写真/永田芳男
山と溪谷社

山溪ハンディ図鑑 山に咲く花

図鑑jp掲載あり

『山溪ハンディ図鑑 高山に咲く花
増補改訂新版』

改訂版監修/門田裕一著
編・解説/清水建美 写真/木原浩
山と溪谷社

高山に咲く花

上記3冊で身近な野原から高山までの野草をカバーする(『高山に咲く花』は樹木も掲載)。掲載種の合計は約4,050種(重複掲載も含む)。DNA分類体系に準拠している。

 

『ネイチャーガイド 日本の水草』

著/角野康郎 文一総合出版

ネイチャーガイド 日本の水草

帰化植物を含む水草・湿地性植物270種を収録。全体像と部分の拡大写真など、1種につき3~5点の写真が掲載され、同定に役立つ情報も充実している。

図鑑jp掲載あり

 

◆種類別図鑑

特定の植物に興味がある人にはこの図鑑です。薄くて軽いハンドブックタイプの図鑑は、何冊か持ち歩いても苦になりません。

『日本のランハンドブック1 低地・低山編 』

解説/遊川知久 写真/中山博史・鷹野正次・松岡裕史・山下弘 文一総合出版

日本のラン

低地~低山に自生する日本の野生ラン95種と、その亜種・変種などを収録。自生状態、花のアップ、識別ポイントなどの写真が掲載され、生育環境の記述も充実している。

『スミレハンドブック』

著/山田隆彦 文一総合出版

スミレハンドブック

日本産のスミレ全種と大部分の亜種・変種など、計107種を収録。自生状態、花の正面・側面、識別ポイントになる部分のアップの写真が掲載されている。


『山溪ハンディ図鑑 日本の野菊』

写真・解説/いがりまさし 山と溪谷社

キク属やシオン属など、日本に自生するいわゆる「野菊」をまとめた図鑑。の検索チャートや判別ポイントをまとめた表も掲載され、類似種同士の違いが直感的に分かる。

図鑑jp掲載あり

『植調 雑草大鑑』

著/浅井元朗 全国農村教育協会

雑草大鑑

種子・発芽から始まる雑草の一生をカラー写真で紹介。撮影条件や記述内容が揃えられているので、類似種同士を比較しやすい。雑草700種以上を収録。




上級者向けの検索表付きの「植物」図鑑

さて、今やあなたは中級者を卒業する段階です。主要な「科」はおおよそ頭に入っていて、さらにそれぞれの「科」の主要な「属」の特徴まで知っているかもしれません。

この段階になると、上級者向けの図鑑を使った方が、すばやく正確に植物の名前を知ることができるでしょう。なぜなら上級者向けの図鑑には、正確な同定に導いてくれる「検索表」が掲載されているからです。当然、それぞれの植物の解説も詳細です。上級者向けの図鑑を次に挙げてみましょう。

上級者向けの図鑑はいずれも大きくて重い作りになっています。しかしその分、内容は非常に充実しています。総合図鑑と「科」別の図鑑の違いはありますが、それぞれの分野の大多数をカバーすると言えるほどの掲載種数を誇ります

 

◆総合図鑑

上級者向けの総合図鑑として挙げられるのは、現在のところこの本だけ。全6巻の百科事典のように大きくて重い図鑑ですが、その分内容も非常に充実していいます。

『改訂新版 日本の野生植物』

編/大橋広好・門田裕一・邑田 仁・米倉浩司・木原 浩 平凡社

日本の野生植物

全5巻+総索引セット。新しい分類体系であるAPGⅢ・Ⅳを採用し、日本産(帰化植物も含む)の樹木と野草6800種を掲載。属・種の検索表が充実。南西諸島・小笠原諸島の植物にも重点を置く。

 

◆種類別図鑑

種類別の2冊も大型の図鑑ですが、それぞれの科に特化して非常に多数の種を掲載しています。いずれも細密に描かれた図がメインの図鑑で、同定が難しい種の特徴がよく分かるように示されています。

『増補 日本イネ科植物図譜』

著/長田武正 平凡社 *オンデマンド版

帰化植物を含むイネ科の野草340種を収録する。区別が難しいイネ科植物の同定に役立つ図解検索表つき。特徴の分かりやすい精細な全体図と部分拡大図が掲載され、解説も詳細。

『日本カヤツリグサ科植物図譜』

著/星野卓二・正木智美 画/西本眞理子 平凡社

日本カヤツリグサ科

日本に自生するカヤツリグサ科の野草26500分類群を掲載。『増補 日本イネ科植物図譜』同様、分かりやすい全体図と部分拡大図が掲載され、解説も詳細。検索表つき。

以上、図鑑の道具としての側面を強調して選び方・使い方のコツを考えてみました。当然のことですが、ここに書いた方法は絶対ではありません。

たとえばビギナーであっても、中級者向けの図鑑を1ページ1ページ繰っていって、目的の花を探すという使い方もできるでしょう。道具である一方で、図鑑はおもしろい情報が満載された本でもあります。花の名前を調べるために使うだけではなく、普通の本のように興味のあるページから順に読んでいくという人もいるでしょう。

紙媒体であれ、電子媒体であれ、自分に合った図鑑を道具として徹底的に使い込む、あるいは気軽に開いて本として読み込むうちに、自分の中に植物のグループ分けが自然に出来上がっていくのではないかと思います。その過程をどうぞ楽しんでください。

 

 

榛原昭矢(はいばら・あきや)

園芸研究家。ライター、編集者、写真家。著書に『鉢植えでも楽しめる 物語と伝説の植物』(新紀元社)、『育てて楽しむ手のひら園芸』(山と溪谷社)がある。

 

図鑑jpに掲載されている図鑑もあります。
植物の掲載図鑑一覧はこちらからご覧ください

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