季節の便り
乃東枯(なつかれくさかれる)に夏枯草は枯れているのか?
2018年は、6月21日から25日が七十二候の「乃東枯(なつかれくさかれる)」。
「なつかれくさ(夏枯草)」とは、ウツボグサのことです。→図鑑jpウツボグサの掲載ページ一覧
そこで、この時期に本当にウツボグサは枯れているのか?
質問・投稿掲示板でおなじみ、長池公園副園長の小林先生に、自然館に生えているウツボグサを確認していただきました。
結果は・・・
全然枯れてない!!!
図鑑jpの掲載図鑑を見ても、花期は6月~8月とされています。
いったいどういうことでしょう?
小林先生から以下のコメントが届きました。
七十二候の「乃東枯」は夏至の頃(6/21~25)を指します。“ウツボグサ(夏草)が枯れる”という意味ですが、この期間は実際にはむしろ花期にあたるのではないかという疑問があります。
推論①
一方の「乃東生」(なつかれくさしょうず)は芽吹きの時期を意味しており、地上に何もない状態から青々とした芽生えが地上に顔を出す時期と一致していました。
これに対し、「乃東枯」は、既に満開の状態からスタートし、徐々に花穂が枯れゆくさま(姿)を描写したものではないでしょうか。
※これから真夏にかけて花が咲き始める周囲の草原性と植物の対比?あるいは、深緑の中でひっそりと枯れていく姿が目に止まっての表現?
推論②
生薬として利用する際は、枯れ始め(花序の半分が枯れたくらい)たばかりの花穂を採取するとのこと。
真夏になり、完全に枯れてしまった姿ではなく、生薬として利用できる枯れ始めのタイミングを逃さないように、暦の一候とした可能性もあるでしょうか。
→6/20現在、満開の状態を確認。今後、夏至の期間の間に枯れていく様子が見られるかどうか、経過観察してみたいと思います。
推論①で「乃東生」(なつかれくさしょうず)の話をされていますが、「乃東生」は12月22日ごろから26日ごろまで、ウツボグサの芽が出る頃のこと。
実は図鑑jpではそのときも、ウツボグサを観察をお願いしておりました。
図鑑には「ウツボグサは花の後に匍匐枝が伸び芽が付く」という記載があるが、写真がなく、「乃東生」の由来になった芽とはどんなものなのか??
小林先生がお勤めの長池公園自然館のウツボグサを掘って、匍匐枝を確かめていただいたのでした。→詳細はこちら
「生ず」の時期には七十二候の通りだったのに、今回の「枯れる」は、違っている、ということで昔と今の暦のズレ、単純な気候のズレといったことではなさそうです。
経過観察してくださるとのことで、続報を楽しみに待ちたいと思います!