短期連載 その羽は誰のもの? -野鳥の羽観察のキホン
番外編 世界の羽事情
新谷亮太=文と写真
このトップ画像は日本に生息する鳥の羽、すべて違う種類を使用しています。カラフルな羽は少ないですが、模様が美しいものも多く、自然の造形のすばらしさに魅入ってしまいますね。
この羽の種名はこのコラムの一番下に書いておきますが、もし「自分で種類を調べてみたい!」という事であれば、『原寸大写真図鑑 羽』をペラペラめくってみましょう! 模様がはっきりしている羽が多いので、絵合わせでもある程度同定できると思います!
さて、今回は海外の羽事情についてお話ししてみようと思います。
フェザーコレクション大国 ヨーロッパ!
鳥の羽の歴史と聞くと、民族衣装などに使われているもものを想像すると思います。やはり鳥の羽は美しく、昔から人の心を魅了していたのですね。また、イギリスではかつて貴族の間でフェザーコレクションが流行りました。世界中から綺麗な羽を集めては身に纏い、位の高さを表していたと聞いた事があります。そのフェザーコレクションブームが欧米全体に広がり、一般人にも浸透しました。それが現在のフェザーコレクションの始まりだと言われています(この事は何かの本で読んだのですが、出典元を忘れてしまいました。ですので間違っているかもしれません、申し訳ないです…)。
そんな歴史のある欧米は凄腕のフェザーコレクターも多く、羽専門の団体もあるほど!
羽専門の団体:The Featherguide organization
この団体を簡単に説明しますと、羽を所有する博物館や個人コレクターを団結させて、完全な羽のデータを作り上げる事を目的としています。
また、World Feather Atlas を作ることが最大の目標としており、この件はIUCN(国際自然保護連合)からプロジェクト名を授かっています。
そして、この団体がすごく驚異的な羽サイトを作成しています!
Featherbase https://www.featherbase.info/
まずは適当に覗いてみて、その凄さを実感してみてください。すごいですよね、ほぼ羽が揃っています。2018年10月28日現在 1142種、3552個体掲載! もう紙の図鑑では到底勝てない情報量です。
しかも、モニター上で羽のサイズを計測することができます。理解が追い付かない世界です。
写真はFeatherbaseに掲載されているコアホウドリです。このようにカーソルを合わせるだけで任意の箇所のサイズを調べることができます。もう凄すぎますね。
「でも、基本ドイツ語や英語だし、全然読めないし使えない…」
そんな言葉もちらほら聞こえてくるような気がします…。でも安心してください。なんとこの羽サイト、各国に管理人がおり、日々翻訳作業を進めています。ちゃんと羽に詳しい鳥屋さんが翻訳していくため、専門家でも読みやすい文章になる事間違いなしです。
しかし、この膨大な情報を空いた時間に翻訳していくので、かなり時間がかかります。気長に待ちましょう。
また、日本の鳥の羽の情報が圧倒的に不足しています。このサイトに掲載するために羽を提供してもいいよ!という方がいらっしゃいましたら私までご連絡いただけると幸いです。私の方でスキャンデータを作成し、掲載させていただきます。プロフィール欄のメールアドレスにご連絡ください。
Featherbaseの徹底したレイアウト
今後、羽を掲載するにあたって羽ならどんな写真でもいいというわけではなく、Featherbaseには決まった様式が存在します。
・基本的に羽は縦で並べる
→サイズを比較しやすい。風切などは翼っぽくカーブさせたりしない
・背面は濃い灰色のボール紙
→白い羽も黒い羽も見やすい色。しかし、なかなか売っていない。
・エプソン社製のスキャナを使用し、同じ方法で色味を校正
→スキャナの機差による色味の違いを無くし、より正確なものとする。
▲上記の方法でスキャンしたシロハラ 性不明 第一回冬羽
確かにこの方法でスキャンすると一目で各羽のサイズを比べられていいですね!
ちょっと大げさな表現ですが、今後この方法が世界基準になっていくのではないかと思います。
やっぱり紙の図鑑も魅力的
Featherbaseさえあればもう羽図鑑なんていらないんじゃない…?
いいえ、そんなことありません! 家の本棚にあるだけで暇な時にペラペラめくって楽しみながら知識を蓄えられる! 電波のない野外でも使える! 種類を調べるにあたって何の仲間か検討付かないときにひたすらペラペラめくって調べられる! スマホやPCでは、この手あたり次第調べるというやり方が非常に面倒ですからね。特に『原寸大写真図鑑 羽』(文一総合出版)ではその威力を発揮します。あとなによりも、本棚に本があるというだけで詳しくなった気分になれます! 参考書を買って勉強した気分になった学生と一緒です。気持ち的に安心できます。
私が所持している羽図鑑。この他にもたくさん存在し、今後も様々な羽図鑑の出版予定があります。
上記で紹介したFeatherbaseを運営している団体からも、ヨーロッパ産鳥類の重要な部位をメインに掲載した簡潔版全2巻、全て網羅させた完全版全8巻の凄まじい羽図鑑が出版予定となっております。
ここ数年で羽界隈が大きく発展しており、今後が楽しみです。まずはFeatherbaseに日本の鳥を充実させるべく、一緒に頑張っていきましょう!
最後にトップ写真の種名を書いておきます。
➀ツグミ次列風切 ②エナガ尾羽 ③オオクイナ体羽 ④アリスイ尾羽 ⑤カワラヒワ尾羽
⑥コムクドリ次列風切 ⑦シメ尾羽 ⑧オオコノハズク尾羽 ⑨タシギ尾羽
⑩アカアシシギ次列風切 ⑪ウミネコ尾羽 ⑫コミミズク尾羽 ⑬ツバメ尾羽
⑭ヤツガシラ次列風切 ⑮コゲラ尾羽 ⑯アオゲラ次列風切 ⑰ヒレンジャク尾羽
⑱シラコバト尾羽 ⑲キジ体羽 ⑳ハイタカ尾羽 ㉑アカゲラ尾羽 ㉒ツツドリ初列風切
㉓ジョウビタキ三列風切 ㉔ヤマセミ腋羽 ㉕チュウジシギ三列風切 ㉖ダイシャクシギ初列風切
㉗コチョウゲンボウ下雨覆 ㉘サケイ次列風切
新谷亮太(しんや・りょうた)
週末に鳥見に行き家では羽をいじる、鳥見歴20年ほどのアラサー会社員。約500種類ほどの羽を所持しているが、正確な数字は不明。年に1~2回は海外へ行って鳥見を楽しんでいる。ツイッターで羽の写真を上げている人がいたらそれは私かもしれない。
https://birdfeatherssite.wordpress.com/
★羽の提供についてはこちらまで→ shinya.toriya@gmail.com