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短期連載 その羽は誰のもの? -野鳥の羽観察のキホン

第1回 まずは、初列風切と尾羽だけを覚えよう!

2018-06-18

初めまして! 週末に羽をいじっている社会人の新谷亮太といいます。

みなさん、街や公園を歩いていて鳥の羽を見つけたことあると思います。大きくて立派な羽から小さくてふわふわな羽まで、結構落ちていますよね。拾った羽を識別できるようになると普段の鳥見の楽しさが倍増します。

もう20年前の話になりますが、当時中学生だった私は地元の公園でカッコいい羽を拾ったんですね。野鳥図鑑を眺めたり詳しい人に聞いたりしたところその羽はフクロウだとわかりました。その公園にフクロウは生息していないと思われていただけに驚きました。そして夜にその公園に行くと確かにフクロウが鳴いていて、たった羽一枚からでも新たな生息地を発見できるんだな、と深く感動しました。

他にも町中でヤマシギやヤツガシラの羽を拾うこともあり、人知れずその場所を通過しているのかなと、色々な想像が膨らみます。

羽一枚から種類が分かれば楽しいですが、いざ羽の識別と言われても最初はどこから始めていいか、どうやって見ればいいかわからないですよね。羽図鑑もありますが、そもそも基礎が分からないと使いこなせません。羽に独特な模様があれば羽図鑑をひたすら眺めて絵合わせで同定もできますが、地味な羽だとかなり難しいです。そのため羽を識別するには最低限の部位を覚える必要があります。今回のコラムは、そんな羽の識別の手助けとなればいいなと思っています。

 

識別に必要な羽の基本的な場所と名称を覚えよう!

普段鳥見をしていても見る機会の多くて拾う機会も多い、「初列風切」と「尾羽」の特徴を覚えましょう! ちょっとした特徴さえ覚えておけば簡単に識別することができます。

図鑑.jpに掲載されている『原寸大写真図鑑 羽』(文一総合出版)を見ると様々な部位が載っていますが、初列風切と尾羽以外の部位は慣れないと識別が難しく、混乱を招きかねません。ですので、今回は識別の基本となる初列風切と尾羽の識別方法をお教えいたします。

そもそも初列風切と尾羽ってどこ?という方のためにトラツグミを展開しました。


▲見えている姿と羽はずいぶんとちがいますね。上面、下面でもかわります。

 

尾羽は分かりやすいですよね。お尻の部分の羽です。初列風切は翼の外側の羽です。詳しくは野鳥図鑑の冒頭ページなど見てください。

トラツグミの翼下面は大きな白線が目立ちますが、これは普段観察していてもなかなか見ることができません。羽を拾うと普段見られない模様をじっくり観察することができ、その鳥への知識が深まります。

つぎに、羽の部位名称を簡単に解説します。写真はオオタカの初列風切です。

 

①羽軸…羽の軸の部分です。厳密には羽柄と羽軸に分かれますが、ここでは羽軸とします。

②外弁…羽軸に対してカーブの外側に位置し、基本は面積が狭いです。鳥の静止時(翼を畳んだ状態)に見えているのはこちら側。

③内弁…羽軸に対してカーブの内側。基本は面積が広いです。飛翔中や羽繕い中でないと観察は難しいです。

④外弁欠刻/⑤内弁欠刻…初列風切によく見られる外弁と内弁にある段差。欠刻を持つ羽が何枚かは種によって異なります。

 

部位と名前が分かったらいよいよ初列風切と尾羽を見分ける方法です。

 
▲  左からフクロウ、ダイシャクシギ、アカゲラ、ベニヒワ。それぞれ2枚ずつで、左側が初列風切、右側が尾羽

 

識別ポイント① 羽軸に注目

上の写真をご覧下さい。おわかりいただけますか…? 一見するとどちらも細長くて似ていますが、初列風切は羽軸がカーブしており、尾羽の羽軸は直線的です。尾羽も、外側に行くにつれ羽軸の根元が曲がりますが、大部分は直線的です。一番右にあるベニヒワの尾羽の根元が少し曲がっているのが分かりますかね? 一部の種類は尾羽の羽軸もカーブしていますが、基本的には上記の認識で問題ありません。

 

識別ポイント② 置けば分かる立体構造

初列風切と尾羽の形の違いは軸だけではありません。平面写真だとわかりにくいですが、初列風切が立体的なため置いたときに内弁が浮き上がります。


▲ミサゴの尾羽(左)と初列風切(右)

 

大きな鳥ではこの立体感が顕著なのですが、小鳥ではあまり目立たないためこの方法は使えないこともあります。

 

識別ポイント③ 初列風切の欠刻に注目する

初列風切には外弁と内弁に欠刻があるとお話ししましたが、羽を並べるとこの欠刻同士がパズルのように組み合わさり翼先が分かれていきます。野外識別でオオタカは6枚、ツミは5枚など翼先分離(翼指)の枚数を数えますよね、そのことです。

 


ミサゴの初列風切 翼を広げた状態では欠刻同士が組み合わさっている。

 

逆に言えば翼が尖っていて、翼先が分かれないハヤブサ類の初列風切は欠刻を持ちません(厳密に言えば1枚ほど欠刻があります)。猛禽類のような鷹斑の入った初列風切を拾ったら、欠刻の有無を見て、野鳥図鑑で飛翔写真を見比べてみるのもいいかもしれませんね。

羽目線で野鳥図鑑を見ると、サギ類は翼先が分かれているから欠刻がある、アジサシ類は欠刻がなさそうなど、より一層深い知識が得られると思います。そしてその知識は羽を拾った時の識別の手助けとなります!

 

初列風切や尾羽の特徴がわかったら種類を調べよう!

さて、やっと本題でしょうか。初列風切と尾羽を見分けられるようになれば羽の識別は比較的容易になります。というのも、部位が分からない状態で、掲載されているかも分からない羽図鑑をめくっての同定作業は非常に大変です(羽図鑑は掲載種数、掲載部位が少ないことが多い)。しかし部位が分かれば普段使っている生態写真が載っている野鳥図鑑を使うことができます。飛翔写真や羽繕い中の写真が多く載っているのがオススメです。私は叶内さんの『山溪ハンディ図鑑 日本の野鳥』でひたすら羽を覚えました。

場所:羽を拾ったらまずは時期と環境を考慮しましょう。夏の森で拾った、冬の海岸で拾った等、そこで見られる鳥はある程度の種類まで絞られると思います。

鳥の大きさを想像する:次に大きさです。なんとなくの私の感覚なのであてにならないことも多いですが、初列風切や尾羽の長さを2~2.5倍くらいにしたらその鳥の全長になります。ただこれは例外もかなりあり、尾羽の部位によっても様々ですので参考程度にしておいてください。

時期と環境である程度種数を絞れて、そして大きさも推定できたら、後は図鑑を開いてその羽の色合いにマッチする鳥を探すのみ! こう聞くとなんとなく行けそうな気がしませんか?そうですよね、しますよね!

というわけでまずは鳥の種数がある程度把握できている都市公園などで羽を拾ってみるといいと思います。コゲラやカワラヒワなど拾えるとかなり嬉しくなっちゃいますよ。

ただし、どうしても地味な羽の識別は難しいです。いくら図鑑を見てもわからないのもあります。そんな時は図鑑.jpの質問・報告掲示板やSNS等で羽に詳しい人に聞いてみましょう。分からないものを教えてもらって答え合わせをする、これも立派な経験値になります。

初列風切や尾羽の識別に慣れてきたら次は次列風切や雨覆なんかも覚えていきましょう。慣れてくると触った質感だけで何の仲間か分かったり、羽軸の形だけでも分かったりしていきますよ!

 

次回は身近な環境で見られる羽で具体的に識別してみます。 

 

 

 

新谷亮太(しんや・りょうた)

週末に鳥見に行き家では羽をいじる、鳥見歴20年ほどのアラサー会社員。約500種類ほどの羽を所持しているが、正確な数字は不明。年に1~2回は海外へ行って鳥見を楽しんでいる。ツイッターで羽の写真を上げている人がいたらそれは私かもしれない。

https://birdfeatherssite.wordpress.com/

 

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