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きのこ分類最前線

イグチ類① ~分類再編で激動の5年

2018-10-02

中島淳志=文

 

今回以降のコラムでは前回のテングタケに引き続き、主要なきのこのグループの一つ、「イグチ」を数回にわたってご紹介します。

 

イグチ類とはどのようなキノコか?

イグチ類は比較的大型の子実体を形成するものが多く、野外で出会う機会も多い、よく目立つきのこです。種までの同定は他の大多数のきのこと同じく容易ではありませんが、少なくとも「イグチの仲間」であることは肉眼でもすぐに分かります。イグチ型のきのこは傘と柄を持ち、傘の裏が「ひだ」ではなく「管孔」という、小さな穴の集まったような構造になっています。サルノコシカケ類なども管孔を持ちますが、イグチの管孔はスポンジのような質感をしており、これが一番はっきりとした特徴といえるでしょう。野外では、一見他のきのこに見えても、傘をひっくり返すと管孔になっていて、その時点でイグチと気付かされることもよくあります。

 

 

写真=一般的には、傘の裏が「管孔」でわかりやすいイグチ類だが…。

 

また、変色性を持つ種が多いのも特徴で、その名もまさに「イロガワリ」という種のように、切断すると空気に晒された部分があっという間に真っ青になるものもあります。この変色性も同定に重要な形質です。

  

写真=子実体を切断すると断面の色が変わるのもイグチ類の特徴の一つ。

 

しかし、「イグチの仲間」というイメージが割とはっきりとしているのに対し、それにぴったりと当てはまる分類上のグループ(分類群)は意外にも存在しません。「イグチ科」には確かに多くのイグチ型のきのこが含まれますが、「ヌメリイグチ科」や「クリイロイグチ科」など、イグチ科の外にも、一般的に「イグチの仲間」と認識されているきのこが見られます。では、「科」の上位にあたる「目」ではどうかというと、「イグチ目」にはイグチ型のきのこだけでなく、ショウロ、ニセショウロ、クチベニタケのような、かつて「腹菌類」に分類されていたきのこの一部が入ってきます。また、オウギタケやヒダハタケのようなひだを持つきのこ、ナミダタケやイドタケのように基物に貼り付くような背着生のきのこも含まれるなど、非常に多彩な形態をとるグループといえます。

 

 

写真=イグチ目のショウロ。一昔前ならとてもイグチの仲間とは思えないきのこ。写真=大作晃一(2点とも)

 

イグチ目の現在、そしてこれからの「分類最前線」を語る上で重要なキーワードになると私が考えるのが、「シクエストレート菌」と「属とは何か」です。近年の新知見や分類の動向については、「イグチ科」に絞った上で次回取り上げることにして、本記事ではこの2つのテーマを掘り下げていきます。

 

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