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シギチの基本 地球を巡る身近な水鳥

第4回 シギ・チドリをどうやって守っているのか? 

2018-05-03

 

ラムサール条約で生息地を守る

国外で、シギやチドリ類をはじめとした水鳥に関する保護の枠組みとして有名なのは第2回にも出てきたラムサール条約でしょう。正式な名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」で197122日にイランのラムサールで採択されました。水鳥の生息にとって国際的に重要な湿地を登録し、湿地を登録した国は、湿地の適正な利用と保全について計画をつくり実施していきます。

現在の条約締結国は169カ国、国際的な基準をクリアし条約に登録されている湿地は2,303カ所、面積は、約2,289,000平方kmにもなります。日本国内では50カ所の条約登録湿地があり、国内最大級のシギ・チドリ類が集まる東よか干潟(大授搦)などが含まれます。国際的に重要な湿地の基準というのは、水鳥に関する部分では以下の3つのどれかに該当する必要があります。

 

1)レッドリストに記載されているような絶滅危惧種がよく渡来している湿地

2)2万羽以上の水鳥がよく渡来する湿地

3)ある水鳥の総数の1%以上がよく渡来する湿地

 

さらに、日本では法令などにより保護や管理が担保されていることや、地元の受け入れ体制があることが条件となります。また、よく誤解されますが、水鳥だけを特別に保護するための条約ではありません。ラムサール条約の重要な考えとして、「賢明な利用(ワイズユース)」があります。水鳥のすまうような自然環境(もちろん他の生物も含まれます)を保持しつつ、人も湿地から持続的に恩恵を得ようとする考え方です。湿地には多種多様な生物がいるだけではなく、水産資源や洪水調節機能のほか、地域の文化をも支えています。資源の採りすぎや、永久にその環境を失うようなことは避け、上手に使っていくことを提案しています。

 


写真=ラムサール条約では湿地の利用も含めた水鳥生息地の保護の枠組み。干潟で今も見られる伝統漁法はワイズユースの代表格(佐賀県 肥前鹿島干潟 ラムサール条約・フライウェイ登録湿地)

 

フライウェイパートナーシップでみんなで守る

さて、日本を含む東アジアにも連携した水鳥保護の枠組みがあります。それが前回お話したフライウェイの「東アジアーオーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)」です。北はアメリカ、ロシアから、日本、韓国などの中継地、越冬地である東南アジアやオセアニアの17国のほか、国際機関、国際NGO、民間企業等35のパートナーからなります。なんと最近、北朝鮮もこの枠組に入りました。このパートナーシップも各国にフライウェイの登録湿地があり、日本は33カ所が登録されています。

フライウェイの目的は、この地域の湿地間ネットワークを強化し、湿地や水鳥に関する情報の共有や啓発、研究のサポートを行うことを目的としています。日本と行き来のある水鳥についての具体的な保全の方策についても定期的に話し合われていて、絶滅危惧種のヘラシギやアカハジロなどは特別チームが組まれています。フライウェイの登録基準はラムサール条約よりも登録の壁が低いので、国内ももっと登録地が増え、各地に拠点ができるといいなと考えています。


写真=ラムサール条約登録湿地の 東よか干潟。フライウェイ登録湿地でもある(佐賀県)


国内では、レッドリストに減少傾向にあるシギ・チドリ類が登録され種の保護に関しては一歩前進というところですが、生息地の保全はまだ十分とはいえません。重要な渡来地でありながら国立公園や鳥獣保護区、自然環境保全地域などに指定されていない場所を抽出した報告では、シギ・チドリ類の調査場所152カ所のうち、10.0%が各保護区の枠組みで「特別地域」に指定され、24.7%が普通地域、66.7%が未指定地域でした(三上ほか、2012)。政府も、海洋・沿岸の保護区の充実に努めており、ラムサール条約やフライウェイと連携し、今後はシギ・チドリ類の生息場所の保全に期待したいところです。

 

  

参考文献:三上かつら・高木憲太郎・神山和夫・守屋年史・植田睦之. (2012).渡り性水鳥類の渡来地の保護区域指定の現状.日本鳥学会誌 61.

 

守屋 年史(もりや としふみ)

NPO法人バードリサーチに勤務。広域に移動する水鳥保護のための「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ」(EAAFP)のシギ・チドリ類の日本国内コーディネーターとして、全国の渡り鳥中継地となる干潟や湿地に足を運び、日夜シギやチドリの調査・保全に取り組んでいる。

 





※終了しました

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