タカの渡りキャンペーン
白樺峠ってどんなところ?
白樺峠は長野県の西部、乗鞍岳の東山麓を走る「上高地乗鞍スーパー林道」が通る標高1600mほどの小規模な峠です。この峠の近くで初めて大規模なタカの渡りが記録されたのは1989年の秋でした。その後も、同所で連日のようにタカの渡りが観察されたことから、1991年に「信州ワシタカ類渡り調査研究グループ」が結成され、組織的なカウント調査がスタートしました。以来、毎秋、渡りシーズンを通した調査が続けられ、白樺峠はタカの渡り観察地として全国的に知られるようになっています。
通過する主なタカはサシバ、ハチクマ、ノスリ、ツミ。例年、計1万5千羽ほどのタカがカウントされ、これまでに20種(渡りは18種)ものタカ、ハヤブサ類が記録されています。
白樺峠の魅力は、まず、タカの数の多さ。9月下旬の晴れた日にはサシバ、ハチクマの見事な集団が通過してゆくのが見られます。彼らが集まって旋回する様子は「鷹柱」と呼ばれ、これが渡り観察のクライマックスでしょう。また、我々の近くを飛ぶタカも少なくありません。幸運に恵まれれば、肉眼でタカたちの勇姿を楽しめます。澄んだ秋空の下、街の喧騒から遠く離れ、ゆったりとタカを待つ時間そのものも、白樺峠での楽しみのひとつです。
なお、カウント調査地はスペースに限りがあるため、一般向けの観察場所として「たか見の広場」を整備しています。
久野公啓 くの・きみひろ
愛知県生まれ。タカの渡りを見ようと、初めて伊良湖岬を訪れたのは中学生のとき。そこから数えると、この秋で39シーズン目の渡り観察となる。近年は、春は青森の龍飛崎、秋は白樺峠に長期滞在し、毎日、渡り鳥を数える暮らしが定着している。楽しみいっぱいの日々だが、無収入なことが大問題。著書に「タカの渡りを楽しむ本」「タカの渡り観察ガイドブック」(以上、文一総合出版)、「日本のタカ学」(東京大学出版会)、「田んぼで出会う 花・虫・鳥」(築地書館)などがある。