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雑種の判断基準というものはありますか?

2018-03-26
●質問
  スミレは雑種が多いとも言われますが、 実際に観察していて、変異の幅と、それが雑種であるということの境界がなかなかつかめません。 雑種の判断基準というもはありますか?
●回答
 雑種を見極める手段はいろいろあります。雑種強勢とよばれる現象でひときわ大株になっていることも多いです。また、栄養繁殖するために、大きな群落になっていることも手掛かりになります。慣れてくると、一目で「雑種臭い」と、勘が働くようになります。

 しかし、それだけでは確実に判断できません。DNAレベルの手法をのぞいて一番有効なのは、不稔性であることを確かめることでしょう。次世代を残す種子を作ることができなければ、まず雑種と判断してもよいと考えられます。花が終わって閉鎖花を盛んに出している季節に見るとよくわかります。雑種はたいていの場合、閉鎖花が膨らまないままです。あるいは膨らんでも中身が空か少数の種子しか入っていなくて、しかも発芽能力がほとんどない(不完全稔性)ことが多いです。あるいは、花粉を顕微鏡で観察して花粉の不稔性を確かめる方法もあります。

 ただし、雑種でも稔性をもつ組み合わせがあります。エイザンスミレとヒゴスミレの組み合わせ(ヒラツカスミレ)は人工交配によって雑種に稔性のあることが知られています。逆にいうと、稔性のある雑種は確定する決め手にかけるために、見過ごされている可能性もおおいにありのです。タチツボスミレの仲間などは、どう見ても雑種だけど、普通に種子を実らせるものもよく出会います。
 ヒラツカスミレの雑種群落は自然状態でも観察されますが、雑種なのか基本種なのか判断に苦しむような個体も少なくありません。おそらく戻し交配を含めて複雑な交配を繰り返していると推察できます。アカバナスミレと呼ばれているものや、対馬でナンザンスミレと呼ばれてきたものなども、同じような要素があります。こうなると、ご質問のように交雑と変異の境目が分からなくなります。そもそも、稔性のある二つの集団を、別の種と認識するのが正しいかどうかという深い問題にも絡んできます。(このあたりはコラムをあわせてご覧下さい。)

 これらをどうとらえるかは、さまざまな意見があり、植物分類学の根幹にかかわってくる話になってしまいますが、ぜひ「種」をダイナミックにとらえながら観察をしてみてください。なぜなら、スミレは生きているのですから。

※回答は以上です。ここでは有料会員向けと同じ内容を公開しています※

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