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アザミ学事始め

第6回 北海道の高山生アザミたち

2018-05-02

アザミ学事始の「その6」は北海道の高山生のアザミを取り上げる。前回、本州の高山生種群ではキソアザミ群を取り上げ、この群が山域ごとに種類が置き換わっていく様子を紹介した。しかし、北海道の高山では登場する種は多くなく、分布の状況は複雑ではないため、種類ごとに解説していくことにする。

 

1.チシマアザミ─正体が正しく捉えられていなかったアザミ

 

タイプ7

チシマアザミCirsium kamtschaticum Ledeb. ex DC.(図1、2)は、花期に根出葉が生存せず、中型の頭花を点頭して咲かせるので、タイプ7で表すことができる。この点は本州の高山生アザミとして取り上げたキソアザミ群と同じである。チシマアザミとその近縁種群はキソアザミ群とかなり近縁と考えられるが、総苞片の腺体がないか、あっても腺体は白色で退化的であることで区別される。

チシマアザミの形態的特徴は、タイプ7で示す特徴のほかには、総苞片が6–7列で腺体を欠き、茎には翼があり、茎葉の概形は鋸歯縁になるものから羽状中裂まで変化し、無柄で基部は耳状に抱茎する。

筆者が植物分類学の勉強を始めたころ、保育社の『原色日本植物図鑑』のシリーズにはたいへんお世話になった。キク科は『草本編[I]・合弁花類』(北村四郎、村田源、堀勝 共著)に収められている。なんといってもこの図鑑には文字による記載に加えて、彩色画が掲載されている点が大きい。しかし、検索表では頭花の咲き方と茎葉の切れ込みについて触れ、記載では総苞、総苞片、花冠について言及されているが、今思うと大雑把である。とくに分布域が問題で、冒頭「北地の山地に普通な多年草で……」と始まるが、最後に分布域が「北海道(西部)」とあり、分布は北海道全域ではなく、局地的なのか?と途方に暮れてしまった。

また、第8図版に「60. チシマアザミ」とあるが,これは道東に分布するシコタンアザミ(アッケシアザミ)であって,チシマアザミではない。ここに描かれた植物は、茎葉の概形が長卵形で、羽状により深く切れ込み、明瞭な葉柄が認められる点でチシマアザミと異なる。総苞片の数を実際に数えることはできないが、混み具合から7列よりも多いといえる。

 

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