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永田芳男さんの日本全国花行脚

第9回 アイヌも民族衣装として利用したシナノキ ~北海道札幌市~

2023-07-24

『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』や『レッドデータプランツ』などでおなじみの植物写真家の永田芳男さん。髭がトレードマークで髭さんと呼ばれていましたが、いまでは髭も真っ白くなりました。三つ子の魂百までで、いまだに植物を追いかけて日本全国花行脚を続けています。旅先で出会った野生の草や木を主体に、時に花の名所なども兼ねて、永田さんが気になった植物をひとつずつ紹介していただきます。

 

シナノキは、北海道から九州まで分布する落葉高木だが、特に北海道に多いような気がする。

花の頃に長い苞が付いているので、かなり変わった印象を受ける。このヘラ状の苞は、花の頃には緑色をしているが、次第に黄色になり、果実期には茶色くなり、冬でもカラカラに乾いたままよく目立つ。

 

 

良く似ている花をつけるものに中国原産の菩提樹(ボダイジュ)や、日本の山にも自生するオオバボダイジュがあるが、違いを知るには葉の裏側を見るとよい。シナノキは無毛だが、ボダイジュやオオバボダイジュには星状毛と呼ぶ細かな白い毛がびっしりと生えている。

自然の草木を上手に生活の中に取り入れているアイヌの民は、シナノキの皮をはがし繊維質の部分を布として活用した。乾燥させて見事なまでの衣装を織りあげている。民族衣装とも呼べるアイヌの人達の衣類は、このような過程で出来上がっているのである。シナノキの繊維質の部分は和紙の原料としても使われる。

 

 

もともと自生していたであろうシナノキを残して、見事に公園として整備している北海道札幌市の中島公園には、シナノキの大木が多い。エゾシカやキタキツネも出没するほどの自然度の高い公園だが、満開のシナノキを眺めながら、アイヌの人たちのことを考えていた。

 

 

シナノキの撮影は7月12日北海道の中島公園で。アイヌの民族衣装は旭川市で。

 

                           

永田芳男(ながた・よしお)

1947年生まれ。植物写真家。おもな著書に『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』『増補改訂新版 絶滅危惧植物図鑑レッドデータプランツ』(いずれも山と溪谷社)など多数。



【図鑑.jpのシナノキのプレビューページ】

https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=7772

★プレビューページは無料です。初めての方は2週間の無料体験が可能です。

 

永田芳男さんの日本全国花行脚

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