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永田芳男さんの日本全国花行脚

第11回 ふるさとのオオイチョウバイカモ ~群馬県北部~

2023-08-08

『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』や『レッドデータプランツ』などでおなじみの植物写真家の永田芳男さん。髭がトレードマークで髭さんと呼ばれていましたが、いまでは髭も真っ白くなりました。三つ子の魂百までで、いまだに植物を追いかけて日本全国花行脚を続けています。旅先で出会った野生の草や木を主体に、時に花の名所なども兼ねて、永田さんが気になった植物をひとつずつ紹介していただきます。

 

私が生まれ育ったのは群馬県北部の山間部。新潟県との県境である。子どもの頃の記憶に、バイカモが真っ白に咲く水路があった。当時はバイカモという名前さえも知らず、キンギョモと呼んでいた。金魚を飼う時にその水草を金魚鉢に入れていたからである。当時のその水路は埋め立てられて今はない。

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オオイチョウバイカモは長野県で絶滅し、今は群馬県と静岡県のほんの数カ所にかろうじて確認されているに過ぎない。環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定されている。群馬県で確認されている自生地は2箇所。いずれも水田に水を引くための水路である。それが何と私の故郷なのである。

一昨年からその情報は事細かに連絡をもらっていて、今年撮影に行く予定であった。ところが、撮影に行く予定の8月を前にして、7月に新たな群生地を友人が見つけたのである。興奮気味に現地から連絡があり、その状態はその日の夜に画像で送られて来た。その画像を見て言葉を失った。情報を貰っていた既知の場所より、はるかに見事な群生だったからである。

 

 

今すぐにでも飛んで行きたいほどの多数の花。豊かな自然の中に咲いている姿は、まさに子どもの頃に見た故郷そのもののような風景だった。

車を持っている友人に頼み込んで、無理して東京から日帰りで撮影に行った。暑い日だったが、我が故郷よりさらに山奥のその場所は、清流がなんとも心地よかった。

 

 

オオイチョウバイカモの特徴は、深裂する浮葉があることである。前回載せたバイカモには浮葉がない。水中葉に比べると浮葉はまばらに出るのだが、この場所のものは浮葉の数が多かった。

 

 

数百メートルに渡る水路にはオオイチョウバイカモが咲きつづいていた。どこにカメラを向けても多数の花。見上げれば豊かな緑の山の上には、白い入道雲がもくもくと湧きあがっていた。

 

 

撮影は2023年8月4日 群馬県で。

(追記)この自生地を見つけたMさん、最新の情報を提供してくれたAさん、撮影に付き合ってくれたKさん。ありがとうございました。この撮影は多くの友人達の協力があって成功しました。感謝です。

   

永田芳男(ながた・よしお)

1947年生まれ。植物写真家。おもな著書に『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』『増補改訂新版 絶滅危惧植物図鑑レッドデータプランツ』(いずれも山と溪谷社)など多数。



【図鑑.jpのイチョウバイカモのプレビューページ】

https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=5216

*オオイチョウバイカモは一部の図鑑で、イチョウバイカモの中に記載があります。

★プレビューページは無料です。初めての方は2週間の無料体験が可能です。

 

永田芳男さんの日本全国花行脚

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