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永田芳男さんの日本全国花行脚

第10回 清流に踊るバイカモ ~滋賀県地蔵川~

2023-07-31

『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』や『レッドデータプランツ』などでおなじみの植物写真家の永田芳男さん。髭がトレードマークで髭さんと呼ばれていましたが、いまでは髭も真っ白くなりました。三つ子の魂百までで、いまだに植物を追いかけて日本全国花行脚を続けています。旅先で出会った野生の草や木を主体に、時に花の名所なども兼ねて、永田さんが気になった植物をひとつずつ紹介していただきます。

 

清流にしか生育できないバイカモは、年間を通して水温が14~15度の流れの中に生育する。一定の流速のある川や水路が生育地である。このためバイカモが生育する流れは、清流の指標ともなっている。

 

 

中山道の61番目の宿場町である滋賀県米原市の醒ヶ井宿は、地蔵川を中心に開けた宿場町で、今でもその面影を程よく残している。この地蔵川にはバイカモが良い状態で繁茂している。流れに沿って歩けば、いたるところでバイカモの白い花を見ることができる。

 

花の形が梅を思わせるのでバイカモ(梅花藻)の名が付けられている。直径は1~2㌢の小さな花だが、びっしりと咲くのでなかなか壮観である。ゆらゆらと揺れ動く様は、澄んだ水とあいまってなかなかに涼しい。今がちょうど花の最盛期。真っ白く咲いている。花の見頃は8月下旬頃までである。

 

 

バイカモには糸のような細い葉があるだけで、浮葉と呼ばれる水面に浮く葉はない。ただ、バイカモの中には、水中葉の他に浮葉を出すものがあり、その葉の形がイチョウに似ているのでイチョウバイカモと呼ばれる。山間部に稀に生えるバイカモである。

 

 

このバイカモにはさらに浮葉が深裂するオオイチョウバイカモという絶滅危惧植物がある。環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に指定され、長野県内の溜池に自生していたのだが、絶滅してしまった。ところがこのオオイチョウバイカモが、何と私が生まれ育った故郷で発見された。詳しいデータが手元に届いているので、次回はそのオオイチョウバイカモをお見せできるかもしれない。8月に撮影に行く予定である。

 

バイカモの撮影は滋賀県米原市の地蔵川で2023年6月25日。この頃より、花の数が増えて8月いっぱい楽しめる。

 

                            

永田芳男(ながた・よしお)

1947年生まれ。植物写真家。おもな著書に『山溪ハンディ図鑑 山に咲く花』『増補改訂新版 絶滅危惧植物図鑑レッドデータプランツ』(いずれも山と溪谷社)など多数。



【図鑑.jpのバイカモのプレビューページ】

https://i-zukan.jp/category/syu?category_id=5218

★プレビューページは無料です。初めての方は2週間の無料体験が可能です。

 

永田芳男さんの日本全国花行脚

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