第3回 ご本家ナンザンスミレとは
ソウル近郊がタイプ地のナンザンスミレ
ナンザンスミレは、ソウル近郊の南山をタイプローカリティー(基準標本産地)とする種で、朝鮮半島から中国東北部にかけて分布している。日本では対馬にだけ分布するというのがこれまでの定説だ。一方、本州以南の日本列島にはヒゴスミレが分布するといわれている。
日本産の植物名を網羅した「植物和名ー学名インデックス」(通称Ylist)で標準とされている学名を比べてみると以下のようになる。
ナンンザンスミレ Viola chaerophylloides var. chaerophylloides
ヒゴスミレ Viola chaerophylloides var. sieboldiana
すなわち両者は同じ種の中の変種関係で、さらに、forma、すなわち品種関係ととらえる説もある。
ナンザンスミレの本拠、朝鮮半島にも、両者が分布しているが、あちらの学者はどう見ているのだろう。韓国の文献では、一応、本文にforma sieboldianaという文字は書かれているが、さくいんには入っていなくて、分類群として認められていないも同然だ。
一方、極東ロシアの沿海地方にもViola chaerophylloidesは分布するが、ウラジオストクのロシア科学アカデミー生物学土壌学研究所に収められている標本を調べると、すべて日本ならヒゴスミレとされる型ばかりだった。しかしながら、ロシアでもsieboldianaという種内分類群は一般には使われていない。(Charkevicz 1987)
中国のFlora of Chinaでは、Y listと同じようにvar. sieboldianaと分類されている。
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