第3回(最終回) 牧野富太郎も気付かなかった!? 「リュウキュウサネカズラ」
皆さんは、サネカズラという植物をご存知でしょうか? サネカズラは、秋になると目立った赤い実をつける、つる性の木本植物です。昔の言葉で、実のことを「実(さね)」、つる植物のことを「葛(かずら)」と呼んだため、サネカズラと呼ばれるようになったといわれています。
このサネカズラは、古くから和歌にもよく登場し、「小寝(さね)=一緒に寝ること」の掛詞としても使われています。最も有名なものは、小倉百人一首にも選ばれた、三条右大臣による「名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな」という歌でしょう。「恋しい人に逢える「逢坂山」、一緒にひと夜を過ごせる「小寝葛」その名前にそむかないなら、逢坂山のさねかずらをたぐり寄せるように、人に知られずあなたを連れ出す方法があればいいのに」という意味の歌です。またサネカズラは、整髪料としても使われていました。サネカズラは、別名ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれますが、これは昔、つるからとった粘液整髪料として使ったことに由来します。
このように、古くから親しまれてきたサネカズラですが、日本において報告されていたサネカズラは1種のみでした。今回の私たちの研究で、日本に分布するこのサネカズラが、実は2種あったことが明らかになりました。そのうち一方の種が、琉球列島に広く分布することから、これを「リュウキュウサネカズラ」と名付けました。以下に、その経緯を紹介したいと思います。
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